LOCAL建材 – 九谷焼の”彩り”で庭空間を表現
新たな地域建材と出会う、見つける。代表取締役 川田 裕康
石川県
九谷焼は石川県南部の金沢~加賀市で生産される色絵の陶磁器。特に「九谷五彩」とよばれる、赤・黄・緑・紫・紺青の絵の具を厚く盛り上げて描く図柄は、華麗で独特の様式美と高く評価されている。
川田 裕康 Hiroyasu Kawada
1957年石川県白山市生まれ。平成6年有限会社川田美術陶板設立。父の代より焼き物を生業とし、現在は陶板表札を中心に手掛ける。昨今では、時代に寄り添った陶板商品の幅を広げ、新たな視点で焼き物の良さを伝えている。
陶器ならではの色褪せない技術
創業以来、弊社は陶磁器メーカーとして、日本硬質陶器(現・ニッコー株式会社)の業務を中心に洋食器やカップの成形を手掛けていました。昭和63年、異業種交流をきっかけに陶器で看板を生産するようになり、平成6年には国の補助金で文字や模様を凸型で成形する立体陶板の開発をスタートしました。それに基づいて出来たものが、当社の主力製品である陶板表札です。陶板は雨風にさらされても色褪せないという特徴を持っていることから、表札の素材として大変適しており、国内外から注文をいただいています。また、再現できる色は、釉薬(※)の組み合わせ次第で無限大。弊社は九谷焼の組合にも加入していますので、九谷焼の色彩である「九谷五彩」を使った陶板も手掛けています。最近では九谷焼の絵付けにおいて鉛分が溶解しない「無鉛絵具」なども登場し、今まで以上に多様な表現を可能にしています。
※ 釉薬(ゆうやく)は、陶磁器や琺瑯の表面をおおっているガラス質の部分
九谷焼のタイルを敷き詰めた庭園
そんな折、「星野リゾート界 加賀」の作庭を手掛けられている京都の植彌(うえや)加藤造園さんから「中庭にさまざまな色彩の陶板を敷き詰めたい」という問い合わせをいただきました。再現する色は九谷五彩と加賀友禅で使われる加賀五色。調合や焼き方で風合いが変わるため、着色方法も釉薬に浸して色をつけるのか、スプレーで吹き付けるのか、筆で塗るのかなど、サンプルをつくりながら、イメージ通りの色に近づけていきました。また、反りを防止するために3回焼くなど、耐久性にもこだわりましたね。モザイクタイルというと洋のイメージがありますが、陶板タイルで和の表現ができるのは新鮮な驚きでした。
陶板の新たな可能性を追求
現在もホームページを通じて、個人のお客様や建築会社、造園会社からお問い合わせをいただいており、陶板が使われるシーンも少しずつ増えています。例えば、写真を陶板に焼き付けた記念碑や路上案内のタイル、東日本大震災の被災地では、津波が来た海抜を壁面に示した陶板モニュメントなど、いずれも色褪せない特徴を活かした商品がさまざまなアイデアによって生まれています。製品によっては施工の難しさやヒビや割れなどの課題もありますが、新しい分野にも積極的に挑戦し、焼き物ならではの美しさを生かせる商品をつくっていきたいですね。
- 有限会社川田美術陶板
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