「自然素材の地産地消」の可能性を、地球環境技術研究所が語る

CLASS1 ARCHITECT Vol.04で紹介した、SUEP.が設計した「清里のグラスハウス」。その温室の床に使用されたFC剤を用いた土舗装は、床に自然の風合いを再現することができ、外と中を完全に区別しない「清里のグラスハウス」のメインになった建材だ。今回は、そのFC剤を開発した地球環境技術研究所社長の藤良和氏に追加取材を行い、記事掲載後の反響や土舗装の可能性についてさらに詳しく話をうかがった。

記事の反響

CLASS1 ARCHITECT掲載以降、記事を読んだ設計事務所や工務店から毎日のように問い合わせがあるという。記事に掲載されたのは主に土舗装だったが、土壁などのカタログも併せて送付したことで、土舗装以外の建材にも関心を持ってもらえたそうだ。

本誌の記事はこちら

LIMITED STORY #01
「土」に対する特別な思い

藤氏がFC剤を開発したきっかけは本誌でも語られたが、幼いころから、藤氏は「土」に対して特別な思いを抱いていたという。

出身が鹿児島の南の島で、何もない農家。そういうなかで自然の土を触ったりして過ごしたため、幼少期から非常に土に愛着を持っていました。

都会に来てからはアスファルトに囲まれ、「アスファルトと比べて土は道がぬかるんだり汚れたりと、色々な問題があるため中々使えない」と言われていることに違和感を感じていた。そんな当時の経験が、FC剤入り土舗装の開発に繋がっているのかもしれない。と藤氏は語る。

その思いで自然素材の研究開発を長年取り組んでいたが、研究ばかりでは世の中に出ていかないと感じた。そこで、最近はさまざまな方法で自然素材の建材を世に出そうと働きかけているという。

LIMITED STORY #02
地元の土を使った舗装で
土のファンづくりを

その「世に出すため」の仕掛けとして藤氏が特に有効だと感じているのが、「地元の土を使った土舗装」だ。

本誌でも一部紹介しているが、「その地域にある土を利用した地産地消の土舗装」に、藤氏は大きな可能性を感じているという。地域によって土の風合いや色合い・合う気候が異なってくるため、その地の土を積極的に使用することは非常に良い景観材料になる。「土を取り寄せるコスト」がかからずに済むことも利点のひとつだ。地球環境技術研究所では、透水性や強度を考慮し、その土に合ったFC剤の配合を決めるなどの技術指導を舗装業者に行っている。

藤氏によると、「特に遺跡などはそういうニーズが高い」という。去年、静岡にある古い遺跡を公園化する際に「地元の土の風合いを出したいので、公園の地面に遺跡の土を使いたい」という要望があったほか、現在大阪の遺跡公園でも、舗装で水田を作るプロジェクトが進んでいる。これは、コンクリートの下地の上に土舗装の水田をつくるという計画。藤氏は、「FC剤を使えば田んぼの色を土舗装で作ることができ、草が生えずに水だけ貯まるような田んぼにできる」と、FC剤土舗装の有用性を語る。

長崎のオリーブ園でも、園内の土を舗装用に利用したことがある。観光客が多く集まる場所であるため、「コンクリートやアスファルトよりも、より固有の景観を出せるものが良いだろう」と、園内の土を舗装に改良したという。

そして、ただ「気候や景観に合うため」という点だけでなく、「地元の土を使う」という地域密着の意味付けを行うことで、より土舗装のファンを増やすことができると藤氏は考えている。自然と調和しやすいという環境面だけでなく、地産地消というローカルな概念と関連付けて、土舗装に新たな価値を付与することができるのだ。藤氏は「環境問題は仲間づくりが大事」と語るが、地産地消というアプローチは行政にとっても魅力的に映り、協力を得ることができる。環境以外の意味と上手く結びつけて自然素材を広めていくアプローチは非常に有効な仲間づくりの手段になっていると言えるだろう。

LIMITED STORY #03
「建材としての土」の可能性を
追求し続ける

冒頭に触れたように、地球環境技術研究所は土舗装のみを扱っているわけではない。研究所内には土を使った建材の展示場があるほどで、内装用の壁材やタイル、土を自由に変形して創るモニュメントまで、土という自然の素材を活かしたものづくりを行っている。

他社ができないような土の応用技術を発展させている。舗装だけにこだわるのではなくて、土の可能性がどこまであるのか、それを追求したい。

FC剤を開発するまで、「苦しかったこともあったが、それ以上に楽しかったので研究を続けられた」という藤氏。研究を楽しく続けることができたのは、人間と自然が共生する社会を実現したいという強い想いが、藤氏の土に対する愛情と結びついていたためだった。藤氏の持続可能な環境を志向する熱意と土愛(つちあい)で、「建材としての土」は今後も進化し続けるだろう。

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