木製サッシは次の段階へ。山崎屋木工製作所が語る「木製サッシのトレンド」

CLASS1 ARCHITECT Vol.04で紹介した、SUEP.が設計した「清里のグラスハウス」。ここで使われた建材のなかで、SUEP.が一つ目に紹介したのが、株式会社山崎屋木工製作所の木製サッシ「CURATIONER」だ。山崎屋木工製作所では、最先端のテクノロジーを駆使して、木材の断熱性能を最大限に活かす複雑な断面の木製サッシを生み出している。今回は、本誌に掲載できなかった山崎屋木工製作所の取り組みや木製サッシの今後と本誌掲載後の反響について、代表の山崎慎一郎氏と、クリエイティブディレクターの竹内港氏から話をうかがった。

本誌の記事はこちら

LIMITED STORY #01
意匠でも負けない木製サッシをつくる

代表の山崎氏は、窓や木工関係のグローバルな情報をいち早くキャッチするため、海外の窓の展示会にも足を運んでいるという。

そのなかで、彼が木製サッシにまつわる可能性を初めて目の当たりにしたのは、ドイツで開催されていた国際木工機械展だった。

しかし、ここ3年は展示会で誰もフレームの熱貫流率のことなどを謳わなくなってきていると感じたそう。というのも、窓の熱貫流率はある一定の数値に抑えられれば十分であるという意見に纏まってきているため。山崎氏はこのことを体感し、「性能の次は、意匠の部分や、スマートフォンとの連動操作、テクノロジーの部分にシフトしていくのだろう」と確信したのだ。

まずは性能が一番だが、いくら性能が良くても、格好悪い意匠では仕方ない。建築士のニーズに合わせながら、木製サッシの新しい形を模索し続けている。(山崎氏)

特に、「サッシをシャープに見せる」ことには力を入れている。木製サッシのラインをどれだけ消せるか?いかに幅を線に近付けてシャープにできるか?という部分は建築士からの要望も多く、今後木製サッシの意匠面で最も重要になるだろうと予測している。

過去のCURATIONERの案件においても、ある設計事務所から「かまちをとにかく細くしてほしい」という強いリクエストがあったそう。その要望に応えセッティングした後、その設計士から「これなんだよ、これを待ってたんだ!」という反応を見て、木製サッシをシャープに納めるニーズを実感したのだ。そして、それらの要望に応えられるよう日々、製品のブラッシュアップを行っているという。

また、木製サッシの開発以外にも、「木製サッシの塗装」という意匠面にもこだわりを持つ。山崎屋木工製作所で行える塗装は、全12色から選ぶことができる。特に黒色(ブラック)はシンプルで見た目も綺麗に仕上がると好評だ。

通常、木製サッシは水分の影響で膨張・圧縮を繰り返すため、塗料を塗った後の劣化が早いとされている。しかし彼らが使用している塗料は、大学と連携して木に合う塗料として独自に開発されたもの。弾性を持つシリコン顔料の塗料で、木材の膨張・圧縮に追従するよう、伸び縮みするため耐久性が高く色持ちも良い。「これは、強度は凄く良い」と竹内氏も自信を持って薦めてくれた。

木製サッシの性能に言及する設計士はまだまだ少ないが、「アルミサッシだと建築の全体像が台無しになるけれど、木でできていることによって全然良さが違うね」と言われることが増えてきたという。木製サッシの性能だけでなく、見た目・意匠面からアプローチしていくことは、今後日本のサッシ業界にとって有効になるのではないだろうか。

LIMITED STORY #02
情報の柔軟な吸収と発信で、日本の木製サッシのイメージを変える存在に

上の文章は、CURATIONERのウェブサイトから抜粋したものである。

このコンセプト通り、山崎氏は常に最新の情報の吸収と発信を行っている。先述したように、海外のなかでも特にドイツの窓の展示会や木工関係の展示会に足を運び、木製サッシの「今」の情報を集めている。それだけでなく、木製サッシのトレンドについては海外から講師を招き、自らセミナーを開いたり、県産材を使った木製サッシの普及・促進に取り組む組織(県産材高断熱サッシ開発事業推進委員会)を発足したりして、情報の提供と意見交換を継続的に行ってきた。

本誌で記載した「製品化した後も自己満足にならないよう、外部の評価試験を取り入れて改善を重ねている」という話からも、木製サッシや窓断熱に対する山崎屋木工製作所のストイックさが感じ取れる。このような取り組みを通して、「少しずつ着実に前に進んでいる。もっと色々な人に知ってもらえる可能性を秘めている」と山崎氏は語る。

特にCLASS1 ARCHITECT Vol.04での掲載以降は、木製サッシが今まで以上に建築士に広がっていくのを実感している。2月中旬時点では電話の問い合わせが100件ほどに増え、掲載後の効果を感じている。山崎氏は、「設計事務所の先生が“使いたい”と思ってもらえるよう、当社ができることを最大限にやりたい」と強い意欲を表していた。

木製サッシに携わり始めた当初、ドイツの展示会で木製サッシの可能性を痛感し、木へのイメージが変わったという山崎氏。今後の木製サッシ界の未来は、代表の山崎氏と竹内氏によって導かれるものになるよう、期待したい。

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