世界中のプロジェクトに携わった建築家・藤原徹平氏が語る。
日本の技術だからこそ実現した建築とは。

撮影 西川公朗

CLASS1 ARCHITECT Vol.08で特集した、藤原徹平氏設計の「那須塩原市まちなか交流センター 『くるる』」。製作・加工・建て方まで一社が手掛けたビルト鉄骨やわずか数秒で硬化するウレタン防水など、日本ならではの技術力があってこそ完成した建築だと言える。実際にインタビューをした際も、「建築士が建築をつくることで、日本の技術をいかに残していけるか」は藤原氏から繰り返し聞かれた言葉だった。

そこで今回は、建築家・藤原徹平氏へのインタビューの中で、誌面に掲載できなかった話をいくつか紹介。日本の建築技術の素晴らしさやコロナ禍での気付きなど、今しか聞けないテーマについて、藤原氏ならではの視点から語っていただいた。

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LIMITED STORY #01
多職種が関わり合う、
日本特有の建築文化の発見
撮影 西川公朗

本誌を読んで伝わるのは、日本の建築技術に対する藤原氏の厚い信頼。特にその話に熱が入ったのは、日南鉄構株式会社のビルト鉄骨について話を聞いていたときだった。日南鉄構は、「くるる」の柱や屋根に使用された鉄骨を、製作から施工まで一貫して担当。自社で鳶職も抱えており、難関だった鉄骨の建て方・施工は、鳶職、構造事務所、施工者、そしてフジワラボと、さまざまな関係者が一緒になって進めていった。

日南鉄構さんから建て方の鳶職を紹介してもらって、構造事務所と施工者と鳶職さんと我々で、鉄骨の建て方をデザインしたのは思い出に残っています。これは本当に日本にしかつくれないものだと思うんですよね。(藤原氏)

藤原氏曰く、これが可能になるのは、日本特有の「合番」という概念があるため。海外でさまざまなプロジェクトを経験している藤原氏は、各国の技術力の違いを身をもって実感している。例えば、アメリカでは合番のような概念はなく、責任の所在が曖昧にならないように整理・明確化しながら現場が進んでいく。アメリカほど責任の明確化が厳密に定められていない国であっても、鳶職のように建て方を専門とする職人がおらず、現場での臨機応変な対応は難しい。「作業を分化・単純化し、誰でもできるようにする」のが、海外の建築技術の主流になっているという。そのような国が多いなか、「鳶職のように組み立てる専門工がいる日本は、凄く特殊な社会」と語っていた。

LIMITED STORY #02
「地方再構築」への挑戦

アジアからヨーロッパまで、実にさまざまな国のプロジェクトに携わってきた藤原氏。そんな藤原氏が今後チャレンジしていきたいのは、「地方の再構築」だという。地方の社屋や社員寮の建築をするなかで藤原氏の中に生まれたのは、より多くの人に地方で働きたいと思ってもらうために、地方の産業の担い手は格好良くなければいけないという思い。そのためのプロセスには特に力を入れており、その地域全体の産業のリサーチを徹底的に行うことはもちろん、自分だけでなくクライアントにも一緒に調査をしてもらうこともあるという。

地方で産業や働く場所を設計するときには、全力と言うか、凄いものをつくってやろうという気持ちになりますよね。本当にその地域にとって希望を感じるようなものをつくろうと。(藤原氏)

そして、藤原氏の地方活性化への期待は、今のコロナ禍において特に強まっている。新型コロナウイルスの流行で、リモートワークやデジタル教育が急激に普及した。近代化に伴い、建物は働く場所と住む場所を分けてきたが、コロナ禍におけるデジタルシフトの加速によって、この職住分離の流れが終わるかもしれない。自宅であらゆる活動が可能になれば、都市部に密集する必要もなくなる。そうなると、ネットワーク環境が安定しており土地が安い場所、つまり地方が、次の移住先となっていくのではと先を見据えている。

コロナ禍の今、少しの工夫でもう一度動き始める可能性を地方は持っており、都市部よりもはるかに豊かな場所になることもできる、と藤原氏は語る。そして、建築家が手掛ける建築が、地方を変えるきっかけになるのではと期待を寄せている。

「くるる」のような象徴的な建物が生まれることで、地方への人の動きも変わってくるのではと思いますね。実際は一口に「地方」と言っても、産業や交通の在り方が何通りもあるので、建物のつくり方も何通りにもなる。地方のつくり方は、これから僕の中でマイブームになっていくだろうなと思います。(藤原氏)

世界中のさまざまな国のプロジェクトに関わってきた藤原氏を最終的に惹きつけたのは、「地方」のまちづくりだった。世界での経験が、今度は地方というローカルな規模でどのように活かされるのか、注目したい。

藤原徹平