3.11をきっかけに、今、人々が纏うべき建材とは。
Ark 久が原
今回紹介するのは、遠藤氏が手掛けた集合住宅「Ark 久が原」。同建築物は東京都大田区の閑静な住宅街に位置しており、都市部における集合住宅の在り方が追及された建物だ。
遠藤氏が集合住宅の在り方について考え始めたきっかけは、2011年の東日本大震災。当時、遠藤氏は東京で被災したという。その経験をきっかけに、遠藤氏は「住居者同士が、いざという時に助け合える環境をつくる必要があり、事前に少しでもコミュニケーションを温めておくことが重要で、その環境づくりを建築というツールが担っている」と語っている。このような想いから、Ark 久が原は住居者同士で「どのような人が住んでいるのか」を普段から感じ取れるようにデザインされた。
その象徴ともいえるのが、メインの中央階段とリビングテラスだ。中央階段は、各階の住居者が顔を合わせてコミュニケーションを生み出す場として活用されており、ここでは住居者同士がお互いを直接知ることができる。またリビングテラスは、リビングの延長として各住戸の玄関に設けられた半屋外空間で、住居者は観葉植物を置いたり、洗濯物を干したりと、自由にこの空間を活用することができる。これにより、廊下を歩く人は、住居者の生活観を間接的に垣間見ることができるのだ。
「こうしたプライベートが滲み出る仕掛けをデザインすることにより、住居者は集合体および共同体としての意識を持つことができるのではないだろうか」と遠藤氏は語る。
Ark 久が原
所在地 / 〒146-0085 東京都大田区久が原3丁目33-17
設計 / 遠藤克彦建築研究所 2015年竣工
撮影 / 上田 宏