MATERIAL
建物に豊かな表情を加える繊細な三層構造
【カーテン】

本館の「ガラス・リボン」は西側に面しているため、ガラスの後ろには日除けのためのカーテンが設置されている。カーテンは、薄い紗のような二重の層と、すだれのような経糸(たていと)だけで構成された三層構造。カーテンを閉じるとテキスタイルの重なりによって縦縞の影を落とし、広げるとドレープや経糸の動きによってさまざまな表情を見せるのが特徴だ。館内からはプライバシーが守られつつもうっすらと外の気配が感じられ、立体的なレイヤーによって強い日射もやわらかく防ぎながら煌めく。この構造が決まるまで、西澤氏は何度も安東氏と現場で試行錯誤を繰り返しながら、ディスカッションを重ねたという。「カーテンに関しては、言われなければ誰も気がつかないくらい非常に複雑な構造になっています。実際に現物を見てもらうと “そういうことか”とわかるはず」と西澤氏。細部へのこだわりが建物の調和をより際立たせている。

西澤さん、なぜこの建材を採用したのですか?

建築の解釈をレイヤーで表現

安東さんは建築に対して造詣が深く、多くの建築家から絶大な信頼を得ているクリエイターの一人。「青森県立美術館」の時にご一緒し、今回もお願いしました。「京都市京セラ美術館」は、過去の建築の痕跡を残しながら「層を重ねるように」現代の姿に改修するプロジェクトでしたが、三層のレイヤーで表現されたカーテンはまさにコンセプトに合ったものでした。いろいろとお話させていただくなかで、我々の考えを汲み取り、プロジェクトのことを理解してくださっていたのだなと思います。平面の模様やパターンだけでないアプローチ方法を持っているところに、安東さんがこれまで培った経験や技術が裏打ちされているなと感じました。

メーカーさんへ聞いた
建材開発秘話
安東 陽子さん
(テキスタイルデザイナー)

明るさを保ちつつ表情をつける

建物の外から見える表情と、建物内にもたらす効果がそれぞれ最適になるように考えた結果、布を3層に重ねるアイデアになりました。半透明で光沢のあるポリエステルの布をカーテンの外側に採用し、光が当たったときの影が美しく見えるよう内側には経糸を入れることを考えました。外の光を取り入れつつ、表情のあるカーテンができたと思います。元々西日対策用のカーテンとして依頼されたのですが、機能性だけでなく光の美しさも楽しめるカーテンを提案できたことが嬉しいです。

「京都市京セラ美術館」のカーテンの特徴

1.美術館の新しさを印象付ける色に

重ねた3層のテキスタイルのうち、窓ガラス越しに見える外側部分は光沢のあるオフホワイトの生地を採用。新築の建物の新しさを強調している。

2.生成りのレースが経糸を優しく透かす

室内側の生地には、マットな薄いレースを採用。利用者に落ち着きを与えると同時に、挟まれた経糸がレースを通して見えることで独特のテクスチャーを楽しめる。

3.独特の表情をつくる鍵となった“経糸”

3層の中央には経糸を入れ、上下を織り止めた構造になっている。繊細な経糸の固定・縫製は特殊な技術を要し、依頼した機屋にとっても初めての試みとなった。

株式会社 安東陽子デザイン

〒151-0051
東京都渋谷区千駄ヶ谷3-55-12 ヴィラ・パルテノン5C
TEL:03-6434-0413
FAX:03-6434-0423
www.yokoandodesign.com/

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