MATERIAL
家の内部と外部の境界にある立体的な膜 
【カーテン】

街の家の商店街側に面したガラス窓には、3階から2階に流れ落ちるように1枚のレースカーテンが掛けられている。このカーテンは、リビングの直上に位置する子ども部屋の声や気配が伝わるようにと施主が望んで設けたもので、2階と3階の間の吹き抜けを貫いて垂れ下がっている。単なる1枚の布ではなく、細い台形に裁断したレースを縫い合わせており、3階ではほぼフラットに近い1枚の布状を呈して光や景色を透過しつつ、2階においてはその3〜4倍の布量がつくる豊潤なドレープが街からの視線を遮り、光は通しながらもプライバシーを守る。家の内部に対して必要な機能を果たしながら、外部に対しては街との境界を形づくるこの家の外構の一部ともなっている。インテリアの一部として色や柄等で選択するカーテンの既存概念とは異なる次元で、裁断と縫製と重力で形づくられる立体的なフォルムを持った建材としてカーテンが用いられている。

増田さん、大坪さん、なぜこの建材を採用したのですか?

形や重さを持った「物」として

建築の延長としてテキスタイルがどうあるべきかというのが私たちが整理できていなくて、今までは空間を用意したからそこの窓に合うテキスタイルを考えてもらうという感覚でした。オンデルデリンデさんの場合は、植村さんは建築をベースにテキスタイルに関わっていますし、もともと洋服のパターンの勉強をしていた久米さんは立体的に裁断・裁縫して重力でどうドレープをつくるかを探究したりしているので、布自体の柄やグラフィックデザインとしてのテキスタイルの話ではなく、形や重さを持った構築的なテキスタイルの話になる所が設計的で、一緒にやりたいなと思いました。「街の家」ではあくまで布の重さとドレープのみで機能と雰囲気を出そうと議論しました。

メーカーさんへ聞いた
建材開発秘話

久米 希実さん
植村 遥さん

そこに存在する理由のあるものを

Studio Onder de Lindeの久米希実さん(左)と植村遥さん(右)

オランダ語で「木の下」を意味するユニット名は、多様な人々が集まることで生まれる豊かな可能性や従来とは異なる観点からのアプローチで建築を一緒に考えていく「多様性のプラットフォーム」を目指し名づけました。布は光、風、時間、温度、重力など環境に作用し多彩な表情を見せます。手に取った布とカーテン全体を見渡す距離での物質感の違いにも驚かされます。私たちは窓に付いている布=カーテンではなく、そこに存在する理由のあるものをサイトスペシフィックに考え製作しています。

Studio Onder de Lindeの特徴

1.異業種の経歴を活かした独創的な提案

建築家の植村遥氏とテキスタイルデザイナーの久米希実氏によるユニット。久米氏はファッション業界でのパタンナー経験を持ち布の立体的な裁断・縫製も得意。

2.カーテンではなく「場」をつくる

カーテンそのものではなく、建築と布、布と人から生まれる関係性=「場」を重視。根本的な在り方や機能を考えた末に生まれる自由なカーテンづくりを行う。

3.布を柔らかい構造物として存在させる

布の持っている表情と、その周りの光や風、温度などの環境を同時に観察することで、建物内部・外部の多様な関係性を生み出す柔らかな構造物として存在させる。

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