体が思うように動かせない子どもたちも預かる「かがやきキャンプ」においては、低温やけどの心配のない安全で快適な床暖房の設置が重要になる。イゼナ社が独自に開発した「アクアレイヤー」は、パックに詰めた水を床下に敷き詰め、その水に蓄熱させることによって床を隅々まで均一に温めるシステムだ。水はコンクリートの約2倍もの高い蓄熱性を持ち、かつ自然対流を起こすため局所に熱がこもることがなく、パック全体を常に一定の温度に保つことができる。よって低温やけどのリスクが極めて低い。また、熱源が直接床材に触れないため、無垢材や石など多様な床材の使用が可能だ。熱源はボイラー等による温水配管やシートヒーターなど複数の選択肢があり、「かがやきキャンプ」ではエアコンの風を床下に吹き出して温めたり冷やしたりしている。パックに詰める水は水道水を用いており、災害時には生活用水として使用できるほか、火事の延焼防止にも役立つ。

自然でやさしい熱環境をつくる

実際に使用されている建物を見学し、自然な心地よさを感じて「かがやきキャンプ」に採用しました。ここでは、冬でもシャツ1枚で過ごせるような温熱環境ではなく、セーターを1枚着ていれば快適という自然な温熱環境を目指しています。設置方法は、根太間に薄い鉄の板を折り曲げたものを設置して水のパックを支え、その板越しに下からエアコンの熱を当てて温めています。エアコンの設置台数はかなり少なく済んでおり、イゼナさんは熱源に必要な容量や建物の断熱仕様なども計算して温熱環境を総合的にバックアップしていただけるので助かります。熱源を部分的に入れれば全体が温まるので、割と安価に設置できます。

人にも地球にも快適な建物を

アクアレイヤーの開発は既存の床暖房へのさまざまな疑問*が出発点です。床下に設置するため長期耐久性が必須だったものの、水が水蒸気として漏れないような袋の技術がなく諦めていました。しかし当時偶然巡り合えた袋での加速実験により、30年以上の耐久性を証明でき開発が実現しました。蓄熱量・蓄熱効率の良いアクアレイヤーによって、不連続にしか得られない太陽エネルギーを有効に活用し、将来的にはオフグリッドの完全なソーラーハウスを完成させたいです。

*建材開発のきっかけとなった「さまざまな疑問」については、こちらで公開しています。