チタン亜鉛合金とガルバリウム鋼板を比較:施工場所に合った金属屋根の選び方がわかる

CLASS1 ARCHITECT Vol.05にも掲載した「チタン亜鉛合金屋根」
CLASS1 ARCHITECT Vol.05で「五本木の集合住宅」の屋根材として使用された、新星商事のチタン亜鉛合金板。主にヨーロッパから輸入している素材で、無垢の状態で使用できるため、塗装などのメンテナンスの必要が無く経年変化を楽しめることが特徴です。
仲建築設計スタジオによる「チタン亜鉛合金屋根」のレビューを読む
今回はこのチタン亜鉛合金屋根の特徴を、一般的に金属屋根として使用されるガルバリウム鋼板と比較します。
チタン亜鉛合金屋根とガルバリウム鋼板を自社製品として取り扱っている、新星商事株式会社への取材を基に特徴の比較を行いました。
- ガルバリウム鋼板
日本国内で一般的に使用される金属屋根。鉄にガルバリウム(アルミ・亜鉛・シリコンの合金)をメッキし、その上に塗装して仕上げる。
- チタン亜鉛合金板
日本国内では製造されておらず、主にヨーロッパから輸入される金属板。塗装はせず、そのままの状態で使用できる。
チタン亜鉛合金屋根とガルバリウム鋼板屋根の比較
外観
ガルバリウム鋼板
引用元:Riho
ガルバリウム鋼板は鉄ベースの素材のため、錆び防止の塗装をする必要があります。決められた色を決められた部分に塗るため、均一な仕上がりにすることができます。
チタン亜鉛合金板
引用元:新星商事株式会社
チタン亜鉛合金は、塗装をせずありのままの金属板を使います。経年で色調が変化していき、明るいシルバーがグレートーンに変化していきます。
またチタン亜鉛合金板の表面には、より質感を引き出すためにあらかじめ酸処理を行っていますが、その酸処理のかかりかたも湿度や温度に影響を受けます。そのため、同じグレーでも農中淡と、微妙なトーンで色のばらつきが出ます。
耐久性
ガルバリウム鋼板
ガルバリウム鋼板は鉄ベースの素材で、錆び防止のための塗装が必要になります。
そのため、塗装が剥がれないよう、定期的に再塗装を施し、鉄を保護し続ける必要があります。再塗装のサイクルの目安は15年と言われています。
チタン亜鉛合金板
チタン亜鉛合金は塗装をせず、色調の変化を楽しめる素材。その色調変化は、亜鉛の酸化・腐食・錆びなどによるものです。
しかし、それは鉄の錆びのように密着性が悪く剥がれていくような錆びではなく、基材を保護するバリアのような役目を果たします。そのため、メンテナンス無しで50年程度持たせることができるほどの耐久性を発揮します。
費用
ガルバリウム鋼板
再塗装のためのメンテナンス費用が必要ですが、初期費用はチタン亜鉛合金に比べて安くなります。
新星商事の場合、材工設計価格は18,000円/㎡~です。
チタン亜鉛合金板
初期費用は高くなりますが、再塗装が必要ないため、ランニングコストは安く抑えられます。
新星商事の場合、材工設計価格は28,000円~/㎡です。
硬さ
ガルバリウム鋼板
元の素材が鉄のため、チタン亜鉛合金と比べて硬いです。そのため、金属板単体で自立でき、下地なしでも形状を保持する折半屋根工法に適する素材です。一方で、曲面に対する追従性能は弱く、繊細な加工には向かない弱点もあります。
チタン亜鉛合金板
素材を構成する99%が亜鉛のため、ガルバリウム鋼板と比べて軟らかいです。硬度が求められるような折半葺きにはあまり向きません。寺院の屋根など、曲面にする加工や、ハゼ式の細かな加工と相性が良い素材です。
チタン亜鉛合金板とガルバリウム鋼板、それぞれの金属屋根が活きる場所
チタン亜鉛合金板とガルバリウム鋼板の特徴は、下の表のように整理できます。
チタン亜鉛合金 |
ガルバリウム鋼板 |
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外観 |
シルバーからグレートーンへの経年変化を楽しめる |
均一な色合いで仕上がる |
耐久性 |
メンテナンス無しで50年持つ |
15年サイクルのメンテナンス(再塗装)が必要 |
費用 |
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適した加工 |
軟らかく、曲面の屋根施工や細かな加工がしやすい。 |
硬く、金属板単体で自立できるため折半屋根に向いている。 |
使用に適した場所 |
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CLASS1 ARCHITECT Vol.05では、仲建築設計スタジオが手掛けた「五本木の集合住宅」に、このチタン亜鉛合金屋根が採用されています。独特のギザギザとした形状の金属屋根が、建物を印象づけるシンボルになっています。仲建築設計スタジオのレビューは、下のバナーからご覧ください。