LOCAL建材 – 「箔」が持つ、新たな魅力。
新たな地域建材と出会う、見つける。代表取締役 浅野 達也
石川県
初代加賀藩主・前田利家公の時代から受け継がれた伝統工芸技術の一つが「金箔」である。日本の金箔生産量の98%以上を占める金沢では、気候や風土も適しており、忍耐強い「職人気質」があるといわれている。
浅野 達也 Tatsuya Asano
昭和43年金沢市生まれ。株式会社箔一代表取締役社長。2009年に箔一の社長に就任し、「金沢箔」という地域ブランドを築き上げた創業者の想いを引き継ぎ、さらに「金沢箔」の新しい価値を作り続けている。
培われた感性が活きる建材づくり
当社はこれまで、器や文房具などの工芸品をはじめとした、様々な分野の箔商品を製作してきました。その中の一つとして、壁に飾る小さなパネルがあったのですが、それが案件をこなすうちに徐々に大きくなり、インテリアから「空間」規模の装飾品に進化していきました。この進化のターニングポイントといえる出来事が、※箔巧館のエントランスに2~3mの大きなボードを造ったことです。この一件が新聞に取り上げられ、「箔一、建材業界へ参入」という見出しが付いたときは、建材という目線がセンセーショナルなんだな、と思いましたね。そして、実際に建材の分野に携わっていく中で、新たな箔の魅力にも気付いたんです。箔は一枚一枚違う表情を持っているため、バランスよく並べると、全体として何とも言えない光を私たちに投げかけてくれます。建材としての箔は、近くで見て美しいかどうかではなく、離れてみた時に美しいかどうかが大切だということ。そして、その見せ方の工夫に私たちのノウハウを活かしたいと思っています。
※ 箔巧館 : 箔一本社内の「体感型金箔総合ミュージアム」
建築家の"創造的思考"への参画
建築家さんというのはやっぱりアーティスト。そのため、建築という分野での箔製品づくりには、独特の難しさを感じます。例えば、過去に壁面の装飾依頼を受けたことがあったのですが、その内容が「空から金の光が地上に降ってくるようなデザイン」というものでした。具体的なことは一切わからず、この光が、柔らかい光なのか、鋭い光なのか、建築家さんの言葉から感じ取って想像するしかありませんでした。そこで私は、「自分もその場に参画し、納めたときにそれが私自身の作品のように誇らしげになるものを創らなければならない」と思ったんです。そのため、その建物を一緒に建築するつもりで、各部屋や外観など、担当以外の話を現場で聞いて回り、まずは建築物全体のイメージを把握することから努めました。このような経験から、建築の分野では、「建築家さんのイメージに私たちが参画しながら、作品を創りあげることが大事なのではないか」ということを学んだのです。
「金沢箔」を、未来に受け継ぎたい想い
現代の日本では、幅広い分野における海外進出やインバウンドの拡大により、国外との接点が多くなりましたよね。その中で、日本の歴史ある伝統産業という個性は、海外の目にも魅力的に映ると思いますので、「伝統産業を残す」ということは非常に価値があると思うんです。ですが、そこで私たちが工夫や苦労をしない限り、絶対に伝統産業を残すことはできません。では、何が大切なのかというと、"古いものを現代に活かしていくこと"ではないでしょうか。そのためにも、建築の分野では、様々な建築家さんに箔を用いて、独自の世界観を具現化してもらえたらいいなと思っています。正直、箔は個性がありすぎるため、扱いづらい素材かもしれません。ですが、実際に使用すると、その建築物がその人にとっての代表作になるくらい魅力的な素材でもあります。そのため、まずは当社にぜひ一度足を運んでいただいて、多くの人に「金沢箔」というものを知って頂けたら嬉しく思います。
- 株式会社 箔一
- 〒921-8061
石川県金沢市森戸2-1-1 - TEL : 076-240-8911
CONTENTS
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This issue’s CLASS1 ARCHITECT
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Ark 久が原
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MATERIAL#1
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MATERIAL#2
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MATERIAL#3
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ARCHITECT’S Q&A#1
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ARCHITECT’S Q&A#2
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ARCHITECT’S Q&A#3
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ARCHITECT’S Q&A#4
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ARCHITECT’S Q&A#5
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コラボレーション建材遠藤 克彦 × 富士工業株式会社
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LOCAL建材 – 「箔」が持つ、新たな魅力。新たな地域建材と出会う、見つける。
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MONIKEN新製品を中心とした無料の建材モニター企画