公共空間にあたたかみが生まれる建材とは。
土佐市複合文化施設「つなーで」
受け継がれる「ミチ文化」を取り入れた
機能を横断する複合空間
高知県の中央部に位置する土佐市は、仁淀川からの豊富な水源のもと、さまざまな産業が発達してきたまちだ。土佐市複合文化施設「つなーで」は、図書館・市民会館・公民館・社会福祉センター・商工会の5つの機能を併合した施設として土佐市高岡町に誕生した。
「公共建築はまちづくり」だと語る高野氏と森田氏。まちの文化や歴史などをリサーチするなかで、高岡町には古くから中心部を流れる用水路「鎌田井筋(かまたいすじ)」と東西に発達した街道が織りなす水陸の「ミチ文化」があることに着目した。
「つなーで」の内部は、スチールプレートを木材で挟み込んだ透過性のある耐力壁が断続的に現れ、施設を横断するような構造となっている。この耐力壁によって、階ごとに機能やプログラムが変わっても連続的な空間体験ができると同時に、利用者の活動の様子が見える開けた空間を実現した。
高野氏と森田氏は設計だけでなく、施設の管理運営計画にも関わった。市民と交流し、建物のあり方を議論することで開館前から「つなーで」を盛り上げる機運が高まり、地元の人たちによるNPO法人も誕生している。
2020年2月に開館し、約1年。コロナ禍の影響があり館内でのイベント開催は難しい状況ではあるが、「つなーで」は当初の想定以上に若年層が多く利用している。まさにこの地に息づいてきたミチ文化の象徴として、これからもまちの賑わいに欠かせない空間になるだろう。
土佐市複合文化施設「つなーで」
所在地 / 高知県土佐市
設計 / MARU。architecture+聖建築研究所