安宅研太郎氏が紹介する信頼できる現場監督
建築は、建築家を中心に、構造家・CADオペレーター・職人といった、さまざまな方々の協力によって成り立っています。今回は建築家の安宅研太郎氏に、信頼している現場監督の方をご紹介していただきました。
─ 安宅さん、信頼している現場監督を紹介していただけませんか?
雛屋建設社の石田絵利奈(いしだ えりな)さんを紹介します。
「かがやきロッジ(2017)」と「かがやきキャンプ(2021)」の現場監督を担当していただきました。
〒500-8015
岐阜県岐阜市松山町12番地
TEL:058-265-2451
https://www.hinaya-construction.com/
─石田さんと知り合った経緯を教えてください。
「かがやきロッジ」では数社から相見積もりをとり、各社にインタビューにも行って、どの会社にお願いするか検討しました。
金額面ではそれほど差がない会社もあったのですが、施主の知り合いが雛屋建設社と親交があったことも決め手になり、依頼することにしました。それで担当として来てくださったのが石田さんでした。
─石田さんとの仕事で印象深かったことは?
「かがやきロッジ」では、うまくいかずにやり直しをした部分もありました。しかし「かがやきキャンプ」では、私も石田さんもお互いに「かがやきロッジ」での経験をふまえて進められたのが良かったと思います。石田さんは、まじめで、細やかに物事を見てくださいます。ディテールやこちらが気にしそうなところを先回りして動いてくださっていました。
「かがやきキャンプ」施工準備期間の2020年4月~5月は、ちょうどコロナによる自粛期間。医療施設ということもあり、現場に頻繁に足を運べる状況ではありませんでした。要所では現場で確認しましたが、打合せは基本的にオンラインにならざるを得ない。構造の配筋検査は、事前にチェック箇所を決めておき、当日そこを画面に映してもらって確認する、という方法で行いました。
コロナ禍の工事を乗り切ったという意味で、石田さんと「かがやきキャンプ」は非常に思い出深いですね。
─ 安宅さんから石田さんへメッセージをお願いします。
「かがやきキャンプ」の工事はコロナ禍にあっても、とても円滑で、石田さんの力が大きいと感じました。また、竣工後も小まめにお施主さんの要望に対応していただき感謝しております。
今後も中部方面での物件がありましたら、よろしくお願いします!
お話を伺いました。
─「かがやきロッジ」「かがやきキャンプ」で、特に印象に残っていることを教えてください。
安宅さんとお仕事をご一緒させていただくのは、2017年の「かがやきロッジ」に引き続き、2回目となります。
今回の「かがやきキャンプ」は「重症心身障がい児の医療型短期入所及びケア施設」とのことで、安宅さんたちと「何が必要で、何をどこまで求められているのか」「子供に危険が無いか」など、施設に求められることを工事期間中何度も検討しました。
それは工事の完成間際まで妥協されず「少しでも子供たちに危険が無いように」と、内装がほとんど仕上がっている段階で、コンクリートの壁の角を何ヶ所もR型に削ったのは、良い思い出です。(笑)その甲斐もあり、お施主様にも大変ご好評いただききました。
─OOKABE GLASSの商品を利用したことはありますか。
「かがやきロッジ」でOOKABE GLASSさんのFRPグレーチングを採用しました。
「かがやきロッジ」「かがやきキャンプ」では床下にエアコンを設置し、床に埋め込んである水のパックを温めたり冷やしたりする床暖房が採用されています(床暖房「アクアレイヤー」の記事はこちら)。他の部屋は家具の下や床の段差部分を利用してエアコンを設置したのですが、1ヶ所だけ上部に何もない場所へ設置することに。
人が歩く場所のため強度が必要なことと、室内の空気を取り込み床下へ風を送るため、それなりに開口が必要でした。そのうえ、メンテナンスのためにお施主様が簡単に取り外せることが必要、という厳しい条件から検討した結果、FRPグレーチングをエアコンの上部に設置することにしました。
OOKABEさんは対応も早く、丁寧に梱包してくださいました。
「かがやきロッジ」で使用された
FRPグレーチングのサイトはこちら
─石田さんの仕事上のポリシーを教えてください。
出来るだけお施主様のご要望に応え、話し合い、ご満足いただけるようこちらも精一杯努力することです。
入社したばかりの頃に、現場で上手く仕上がらなかったことがあります。私の経験不足と、年配の職人さんに対して強く出られなかったことが原因でした。その時は、お施主様に仕様の変更をお願いし、何とか妥協していただきましたが、苦い思い出が建物と共に残りました。
建築は、他の物と違い簡単に買い替えることも出来ませんし、工事一つでもかなりの金額が必要です。成功しても、時に上手くいかなくても、解体されるまで残ります。どんな建物も、お施主様たちはそれなりの年月でご計画され、楽しみにご準備され、住宅であればその後何十年分の人生をかけてお支払いをされることになります。引渡しの時に「頼んで良かった!」と言っていただけるよう、初心を忘れずにいたいと思います。
─建築を学ぶ学生の方へメッセージをお願いします。
建築とは、紙に書かれた建物を現実にこの世に作り出す仕事です。いろいろなお施主様がみえて、様々な条件の建物があります。一つの現場だけでも何百人もの人に指示をして、それを管理し、大きな金額を動かす責任重大な仕事でもあります。
安全・品質・原価・工程管理等、その他多くのものを求められますが、その建物が完成すれば解体されるまでの長い期間、多くの人の目に映ります。設計・管理をされる設計士さんもそうですが、これほど遣り甲斐のある仕事は中々ないと思います。
人間は一人では、何も出来ません。多くの人が協力してこそ、建物が生まれます。このワクワク感とプレッシャー、そして達成感をぜひ味わってみて下さい。
「CLASS1 ARCHITECT Vol.19」では建築家の安宅研太郎氏による建材のレビューをご紹介していますので、ぜひご覧ください。