──中島先生が「STEAM教育」を知るようになったきっかけを教えてもらえますか。
中島:STEAM教育自体は21世紀初頭にアメリカで提唱された考え方です。これまでのような知識を詰め込んで暗記する学びから脱却して、答えは一つじゃない、もっと自分で思考して作ろう、という風潮がまず生まれました。その流れの中でリベラルアーツやアートデザインを広く捉え、そこから問いをつくるようになり、旧来のSTEM教育にAが加わるSTEAMの思想が誕生していきました。
私も数学や音楽が好きで、つくる喜びが実は数学や音楽にもあって、STEAMやSTEMの思想を読むとより面白さを感じて、世界ではSTEAM教育というものが叫ばれている、という情報が日本にも入ってくるようになってきた時代に出会いました。
STEAMは様々なジャンルの方とコラボレーションがしやすいというのも感じていました。エンジニアの方や建築家の方、バレエダンサーの方など、様々な世界が掛け合わさることで新しい価値が生まれていく、そのきっかけがSTEAMになる、そう考えています。
時に、思想よりも言葉が先行しSTEAM=お勉強的に捉えられることもありますが、本来はSTEAMとは科学者や数学者のように考え芸術家やエンジニアのように創り出す「学び方」を表すものです。思想からまずは理解していかないと本当のSTEAMは伝わらないのでは、と思い、“つくる喜び”をよく伝えています。
──小堀先生は建築家からSTEAMをどう捉えていらっしゃいますか。
小堀:初めて中島さんからSTEAM教育について教えてもらったのですが、建築の世界こそSTEAMだなと思いました。建築系は学問的には理系に属していますが、それは日本だけの話で、海外では文系寄りです。何故かというと、日本では戦後復興期に国土を開発しようという考えから建築も土木も工学部に属させられたからです。
しかしヨーロッパではレオナルド・ダ・ヴィンチなど多くの人たちが建築分野のみならず、アート・テクノロジー・数学・医学においても才能を発揮してきたわけです。つまり建築とはあらゆる分野を横断できる学問なのです。私たち建築家は工学的な出身が多いのですが、芸術やアートは根底に存在しています。そういう意味ではSTEAMにはまさにものを作り出すための必要な要素がある、と感じています。
建築学科に進学する学生たちは、ある意味ものづくりが好きで入ってくるのですが、探究してものづくりをしてプレゼンをして、という授業を繰り返すから、建築の世界だけでなくいろんな分野に応用していく子たちが多い、というのも感じています。小中学生にしてもものづくりに取り組むことで自分は何ができるだろうと発見をすることもできます。その時点でやりたいこと、なりたいものが見えてくると、どの大学に行って学べばいいか気付くはずです。そういう教育方法もあるのではないかと、中島さんと話をしてすぐ共感できました。だから建築はまさにSTEAMだなと感じたわけです。