【新連載】メーカーさんに聞いた、一推し製品の深堀り秘話 #01 シナジーメディア株式会社(GREEN UPCYCLE)

2024.04.25
CLASS1 DIGESTの新連載企画がスタート/建材メーカーを含むサスティナブルな活動を行う企業に独占取材!彼らの一推し製品の裏側に迫り、熱い想いを引き出します。

燃やす?埋める?捨てられる服で建築業界に新たな価値を。

東京都世田谷区にあるシナジーメディア株式会社は、2022年8月に「グリーンアップサイクル®」プロジェクトを立ち上げました。このプロジェクトは、世界的に深刻な問題である大量の衣料廃棄物を “燃やす”・“埋める” のではなく、新たな素材として暮らしの中で再活用することを目指しています。

今回、グリーンアップサイクルプロジェクト統括ディレクターの加賀谷さんより、”このサスティナブルな素材を建築業界やインテリア業界にも広めたい” という想いをCLASS1 DIGESTに寄せてくださることに。その想いをきっかけに、衣料廃棄物の問題や解決策、そして持続可能な社会へとつながる展望について、お話を聞きました。

 

シナジーメディア株式会社
グリーンアップサイクルプロジェクト統括ディレクター
加賀谷 太一さん 

ー早速ですが、グリーンアップサイクル®とはどのようなプロジェクトですか?

不要になった衣類やデニムの端材、麻袋などの廃棄素材を回収し、新しい循環型素材や製品へと生まれ変わらせるプロジェクトです。

グリーンアップサイクル®では接着剤を使わない製造工程で、「サーキュラーエコノミー1」を実現するフェルト状のグリーンアップサイクルシートやパネルをつくります。その後、協力会社にて、トートバッグやプランターカバーといった製品に二次加工してもらい、加工した製品を当社で提供しています。

※1  サーキュラーエコノミー=循環型経済の意味で、資源を廃棄しないことを前提に製品を生産し循環させる経済システム

左:トートバックなどのアパレル小物 右:プランターカバー

ーなぜ、この事業を立ち上げられたのですか?

元々、代表の佐藤が、グリーンアップサイクルの素材元となる企業で、マーケティングの顧問をしていたことと、近年の世界的な衣料廃棄問題の深刻化がきっかけですね。実は、日本の衣料廃棄物だけでも、年間50万トンを超えると推計されており、そのうちの90%以上が焼却・埋め立て処分されるといわれています。この問題を目の当たりにし、何か解決策を見出せないか?という強い思いから、グリーンアップサイクルの事業を本格的にスタートしました。

ーそのような経緯だったのですね。早速ですが事業の流れについて教えてください。

事業の主な流れは、以下の6つのプロセスになります。

①資源回収
古着や製造工程で出た端材などの衣料廃棄物を集めます。

②前さばき(分解・素材分別)
回収した衣料廃棄物からボタンやファスナーなどの付属品を取り除きます。

③粉砕・裁断(焼却・埋め立て処分素材)
衣類を裁断機に入れ、細かくカットします。

④反毛
フリース(ワタ)状に繊維を戻します。

⑤形成(一次加工)
独自設計の秘蔵工程により、フェルト状のシートやパネルに加工します。

⑥製品化(二次加工)
二次加工を協力会社に依頼し、製品を提供します。

グリーンアップサイクルの循環図

このプロセスを通じて、グリーンアップサイクルは、衣料廃棄物を循環型素材へと生まれ変わらせています。詳細は、グリーンアップサイクルの公式サイトにてご覧ください。

ーありがとうございます。これまでに製品化されたインテリア商品をご紹介ください。

いくつかあるのですが、今回2つご紹介します。
1つ目は薄いシートを使用した、緑化用プランターです。1㎜厚のシートを使用していますが、素材の保形性から土は収まったまま不要な水分をろ過してくれるので、プランターとして最適です。

グリーンアップサイクルシートで製作した緑化用プランター

2つ目は、写真のカウンターで、正面には1㎜厚のシートを貼り合わせています。
遠目で見ると大理石のような雰囲気もあり、様々な繊維が混在していることから、豊かな表情を作り出してくれます。

グリーンアップサイクルシートを貼り合わせたカウンター

このような製品は、クライアントの価値観を伝えると同時に、お客さまとのコミュニケーションツールにもなります。
例えば、このカウンターの場合、遠目には大理石のように見えたが、実際はサスティナブルな布素材なんだ!と分かることで、その背後にある物語やクライアントの姿勢を伝えることができます。そこからお客さまと環境配慮についての会話が生まれ、グリーンアップサイクルの取り組みを紹介する機会にもつながっています。

ーアイデア次第で色々な使い方ができそうですね!グリーンアップサイクルの素材についても教えてください。

廃棄衣料が原料となるフェルト状のシートとパネルの2種類があります。特徴としては、サーキュラーエコノミーを実現する接着剤を使用しない繊維素材のため、割れる心配がなく再リサイクルも可能です。また、お客さまの衣料廃棄物からオーダーメイドでシートやパネルを作ることもできるため、環境に優しい資源循環を構築します。

左:シートやパネルの加工 右:半永久的な再利用が可能

ー他にも素材の強みや特徴はありますか?

強みとしては、シートを36判サイズで薄さ0.5㎜まで実現できることです。この薄さであれば湾曲した箇所にも使用できるので、カーブのある椅子や什器に貼り合わせることも可能です。
一方でパネルは36判サイズで、厚み5㎜、10㎜、20㎜の3種類を展開しており、比較的軽くて強度があります。そのため、椅子や棚、パーテーションといったインテリア用途としても相性がいいかと思います。

ーシート・パネルにおいて、今後期待することはありますか?

シートは湾曲できる素材なので、アイデアによって面白いものが生まれることを期待しています。パネルは、例えばDIYで使うような合板の代替であったり、別途パンチング加工を施すことで有孔ボードのような形にもなります。

パンチング加工を施したパネル素材

また、自治体やお客さまとの会話の中で、シートやパネルの災害時の汎用についても検討されています。例えば、シートを “災害時に頭部を守る保護カバー” としたり、パネルを “体育館で使用する防寒パネル” として使用するなど。これらの相談は、災害時のシートやパネルの汎用性を探る良い機会となっており、今後の新たな災害ツールの可能性としても期待を寄せています。

左:デニム素材シート 右:デニム素材パネル

ーシートとパネルの色展開についても教えてください。

それぞれ、デニム素材と麻素材、カスタム素材の3色展開になります。

デニム素材 麻素材 カスタム素材
(顧客廃棄衣料回収)
ネイビー系 ベージュ系 グレー系

ーベーシックな色展開でどれも使いやすそうですね。これらの素材を通して、今後グリーンアップサイクルプロジェクトで目指していることはありますか?

改めて、日々大量に出てくる衣料廃棄物を”燃やす・埋める” のではなく、グリーンアップサイクルシートやパネルなどに再生し、有効資源や価値あるモノとして提供したいと考えています。また将来的には、各自治体や市民の方々と協力し、その地域で出てしまう衣料廃棄物を有効活用できるような、地産地消モデルの構築を目指したいですね。

ーありがとうございます。最後に、CLASS1 DIGESTの読者に向けたメッセージをお願いします!

建築士さんやデザイン事務所の方、DIYやサスティナブルな取り組みに関心のある方々に、グリーンアップサイクルの素材を、まずは知っていただきたいと思っています。
そのなかで、建築設計やインテリアなどの分野で、”こんなアイデアを試してみたい!” ”こんな使い方はどうだろう?” といった読者さまからのご意見があれば、ぜひ新しいアイデアを形にしてもらいたいですね。たくさんのご意見やお問い合わせをお待ちしております!

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シナジーメディア株式会社
窓口:加賀谷

▼お問い合わせはこちら
https://www.greenupcycle.jp/contact.html

 ※個別ご相談可能

※お問い合わせの際はCLASS1 DIGESTをみたとお伝えいただけるとスムーズです。

〒158-0094
東京都世田谷区玉川2-24-6シルク玉川長崎屋ビル602
TEL:03-6432-7513
URL:https://www.synergymedia.co.jp/
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| 編集後記
グリーンアップサイクルの取り組みは、衣料廃棄問題に対して、生活に取り入れやすい循環型の解決策を提案しています。このようなサスティナブルな取り組みや今後の展望が、より多くの業界に広がり、持続可能な社会の実現に貢献することを心から応援しています。

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