【新連載】メーカーさんに聞いた、一推し製品の深堀り秘話 #02 東京ブラインド工業株式会社

2024.05.09
CLASS1 DIGESTの新連載企画がスタート/建材メーカーを含むサスティナブルな活動を行う企業に独占取材!彼らの一推し製品の裏側に迫り熱い想いを引き出します。

小さな会社だからこそ生み出せた、唯一無二の国産木製ブラインド

東京ブラインド工業株式会社は、東京港区にある創業75年の歴史を持つ小さなブラインドメーカーです。創業当初から、市場にないもの、ゼロイチのものづくりを好み、数多くの試行錯誤を繰り返してきました。そして、環境にやさしい国産の木製ブラインドを筆頭に、音の悩みを解決する吸音製品へと波及。時代に寄り添った商品開発やアフターフォローに力を注いでいます。

また、家族間で事業継承を行っていることも大きな強みの一つ。今回、代表の息子さんである櫻井和希さんに、祖父の創業から現在に至るまでのストーリーと、今後の展望についてお話を聞きました。

 

東京ブラインド工業株式会社
経営企画室 室長
櫻井 和希さん

ー会社の歴史やブラインド事業を始めたきっかけについて教えてください。

元々は会長(祖父)が創業した会社なのですが、現在は亡くなっており、父が代表を務めています。なぜ始まりがブラインドだったのか?というのは定かではありませんが、会長がブラインド業界で有名な「立川ブラインド」の創業メンバーであったことが影響しているかと思います。

亡くなった会長は、元々市場にないものを開発するのが好きな人で、なかには、日の目を浴びないものも多くあったようですが、大ヒットに繋がったのが、国内で初となる衝立タイプのアコーディオンスクリーンでした。そこから、現在の代表が国産の木製ブラインド事業を手掛けます。会長のユニークなDNAは自然と引き継がれ、後に木製や吸音ブラインドといった付加価値のある商品開発につながっていきました。

左:アコーディオンスクリーン衝立タイプの図面 右:完成した製品

ーそういった経緯があったのですね。そのなかで、木製ブラインドに着目されたきっかけはありますか?

1995年頃、国内のメーカーで初めて輸入木材を使用した木製ブラインドを製造したんです。しかし、他社の参入が相次ぎ差別化が難しくなってきました。そうした背景から、当社は国産の無垢材を使用した木製ブラインドを国内で初めて製造することに挑戦しました。
国産材を選んだ理由は、輸入材に比べて国産材が何倍も高価であるにも関わらず、日本の木材を好むお客さまが一定数いると理解していたからです。そのため、輸入材ではなく国産材に焦点を当て、国産の木製ブラインド事業を確立していきました。

ー国産の木製ブラインド事業として、御社独自の強みを教えてください。

同業者からライバルとしてではなく、仲間としてつながりを持てていることが、当社ならではの強みですね。業界でいうと、大手同士がお互いの商品を販売するなどといった事は基本的にないのですが、当社は小さな会社であるため、大手メーカーさんが代理販売してくださっています。また、小規模体制を強みに、県内外問わず現場確認を行うなど、お客さまのニーズに迅速に答える体制も整えています。

ーありがとうございます。木製ブラインドの独自の強みはありますか?

大きく3つあります。
1つ目はスラット※の特徴として「国産の無垢材を使用し、ジョイントのない一枚板で仕上げること」にこだわっています。さらに、自然系塗料で仕上げることで、木の温もりと香りも保持すると共に、調湿効果も期待できます。

2つ目は「メカ部分が耐久性に優れている」点です。当社の木製ブラインドは、長く使えるよう伝統的な製法を大切にし、無骨ながらも強度が高く壊れにくい構造になっています。

3つ目は「お客さまからの支給材でも対応できること」です。このサービスにより、地場の木材を使用したオリジナルの木製ブラインドを製作することが可能です。

※スラット=木製ブラインドの羽根部分

左:縦型は最大3000mmまでジョイントなしで対応可能

ースラットは木材のどの部分を使用するのですか?

実は、スラットに使える木材は、大木からわずか1割ほどしか取れないんです。しかも、横型と縦型の設計上、厚みや使用部位が異なるため、写真のような赤枠(横型)、黒枠(縦型)の部位を使用しています。例えるとマグロの大トロのような大木の希少部位ですね。

これは当時の開発者が、横型、縦型ブラインドのスラットに反りが起こらないよう、製材屋さんと深く検証した結果、写真のような取り方になったと聞いています。

上:使用部位のイメージ

ー木材の使用しない部位は、どのように活用されますか?

ここの製材屋さんは、家具製造も手掛けており、使用しない木材を優良な建具や家具の材料にしたり、他社に国産の壁装材、天井材として提供するなど、有効活用いただいています。このようなロスを発生させない循環があるため、ブラインド用の木材価格を相当抑えていただいています。

ー適材適所の有効活用により、価格も抑えられているのですね。
大木から木製ブラインドに加工する流れを教えてください。

まずは、製材屋さんが大木を購入後、板割などの製材を行い乾燥させます。その後、当社の工場にて切断や塗装、組み立てなどの加工、出荷を行います。

ー開発当時、この事業はいける!と確信したポイントはありましたか?

これは製材屋さんとのご縁ですね。当時、鳥取県の智頭杉(ちずすぎ)を扱っている製材屋に、ダメ元で連絡を取りました。知り合いでもない中、サンプルを求める私たちに対して、その製材屋さんだけが応えてくれたんです。この製材屋さんは、長い歴史を持ち、立地や環境が良く、乾燥技術にも優れていました。この出会いこそが、「これはいける!」と確信した大きなターニングポイントですね。この製材屋さんとのご縁があったからこそ、現在の木製ブラインドが存在すると言っても過言ではないです。

 上:鳥取県の製材屋さん

ー御社の取り組む、100年の業界最長のメンテナンスサービスについて教えてください。

当社の木製ブラインドは、10〜15年の使用後に紐が切れたりスラットの回転が悪くなることがありますが、スラット自体は再利用可能で、多くの場合レールのみの交換で済みます。当社では、摩耗部品の交換やスラットのサンドペーパーがけから再塗装、メカ部分の再調整まで行い、新品同様の姿に復元するリメイクサービスを行っています。

このサービスは有料ですが、新規購入に比べてはるかに安価で、納入時の木材の香りまで復活させることができます。他社では提供していないこのサービスは、サスティナブルな視点にもつながり、時代に合ったサービスとして自信を持ってお客さまに提案しています。現在は発売から20年で、まだまだ100年には及びませんが、これから少しずつ実績を積み重ねていきたいですね。

ー改めて、御社のものづくりに対する想いや価値観を教えてください。

「他に類を見ないユニークな商品開発」を常に意識しています。これはやはり、先代から受け継いだ感性ですね。現在の代表が考案した、木製縦型ブラインドや吸音ブラインドも、当社が国内で初めて開発に成功しました。私たちとしては、市場に多くある汎用品ではなく、ニッチな需要を追求する姿勢をこれからも大事にしていきたいと思っています。

ーありがとうございます。
最後に、今後チャレンジしたいことはありますか?

やはり、木製ブラインドの地産地消に力を入れていきたいですね。正直、浸透していくには課題もありますが、展示会などで興味を持ってくれるお客さまは多いんです。一方で、実際に取り組もうとするとハードルが高く感じられ、諦めてしまうお客さまも多いのが現状。そこで予め製材所をピックアップしておく、製材所を一つにまとめるなど、ハードルを下げる取り組みも検討していきたいと思っています。

他にも、乾燥技術や製材、余った木材の利用方法など、クリアすべき課題はありますが、これらを解決できれば新たな事業の柱になり得ると考えています。

地産地消についても、全国から問い合わせをいただけるとありがたいですが、希望の県産材がブラインドに適しているか?といった検証期間は必要です。そういった課題を一つずつクリアしながら、今後、他の県産材への輪が広がっていくと嬉しいですね。

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東京ブラインド工業株式会社
窓口:櫻井 和希

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〒108-0072
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TEL:03-3443-7771(代)
FAX:03-3443-7775
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| 編集後記
櫻井さんのお話から、先代のお爺さまが市場にない面白いものづくりを好み、現在もその情熱が受け継がれていることに胸が熱くなりました。独自の木製ブラインドや吸音製品、時代に寄り添ったユニークな商品開発を、今後も楽しみにしています。

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