【サンゴの塗り壁】沖縄の海洋保全とサスティナブル建材 #06 株式会社 沖坤(オキコン)

2024.07.16
新連載企画『メーカーさんの一推し製品』がスタート/建材メーカーを含むサスティナブルな活動を行う企業に独占取材!彼らの一推し製品についてお話を伺いました。

サンゴを使って、育てる。
海洋保全にも貢献する「サンゴの塗り壁」

株式会社 沖坤(オキコン)は1973年の設立以来、コンクリート二次製品を中心に沖縄の社会基盤を支えてきた企業です。近年では風化造礁サンゴ※を主原料に、リサイクル材も活用した「サンゴの塗り壁」を開発しました。この製品は、沖縄の伝統的な資源を活かしつつ、機能性にも優れた沖縄発のグリーン建材となっています。
また、同社は「uluサンゴサイクル」と呼ばれる取り組みにも注力。この活動では、「サンゴを使って、育てる」をコンセプトに、風化造礁サンゴを用いた建材開発とサンゴの養殖支援を行うことで持続可能な社会の実現を目指しています。

今回、専務取締役の比嘉さんと事業開発部長の安里さんに「サンゴの塗り壁 」や「uluサンゴサイクル」ができた背景、今後チャレンジしたいことについてお話を伺いました。

※風化造礁サンゴとは、サンゴ礁が自然の波の作用で破壊され、長い年月をかけて水洗いと破砕を繰り返し、サンゴの骨格のみとなり砂礫化して海底に堆積したもの。

 

株式会社 沖坤
専務取締役
比嘉さん


事業開発部長
安里さん

ー会社の事業内容と「サンゴの塗り壁」をスタートした背景を教えてください。

(比嘉)当社は1973年の設立以来、沖縄の社会基盤を支えるコンクリート二次製品や公園の景観資材の製造販売を中心に事業を展開してきました。近年では、環境に配慮したグリーン建材の開発にも取り組んでおり、その一つが「サンゴの塗り壁」です。
この製品は、風化した沖縄のサンゴを主原料に、沖縄の地域資源にも光を当て開発されました。きっかけは約20年前、沖縄の産業まつりに出展した際、展示した土舗装をみたお客様から「これを土壁として使えないか?」と提案されたことがヒントに。この提案を受け、当社の代表を中心に開発へと乗り出しました。

左から、中心事業となるコンクリート二次製品、公園景観製品の赤瓦を使用した東屋

ー代表の宮城さんの価値観が、ものづくりの原点になっていそうですね。

(比嘉)当社の代表は、“自我作古(じがさっこ)※” 精神で、新しいことにチャレンジし、様々なことに積極的に取り組む人です。そのなかで、身近な産業廃棄物に関しては、なにか価値のあるものに変えられないか?という意識も強く、持続可能な地域社会の発展や環境保全に貢献したいという想いがあります。

※自我作古とは、前人未踏の分野に挑戦し、困難や試練に耐えて開拓に当たる姿勢。

ーそういった価値観から、沖縄の資源である風化したサンゴに着目されたのですね。
開発された「サンゴの塗り壁」は、どのような特徴がありますか?

(比嘉)一番の特徴は、沖縄の地域資源や産業廃棄物を積極的に採用していること。その代表ともいえるのが風化造礁サンゴです。風化造礁サンゴは死滅してしまったサンゴですが、死滅したサンゴであっても、優れた調湿効果をはじめ、消臭、ホルムアルデヒドの吸着・分解効果に優れています。そのほか、サンゴの塗り壁は「F☆☆☆☆」も取得しているため安心安全な住空間を保証してくれます。

ー「サンゴの塗り壁」の開発において苦労した点はありますか?

(比嘉)開発の際には、素材の配合バランスの調整や、建築材料の各種認証取得に苦労したと聞いています。代表が考える商品コンセプトとして、出来るだけ多くの地域資源を使いたいという強い想いがありました。しかし、サンゴの塗り壁は一般的な漆喰とは異なる素材で配合されているため、塗り壁としてのクオリティを高めていく過程で、配合のバランスなど多くの試行錯誤を重ねたと聞いています。

ーそのような過程を経て、納得のいく形に仕上がったのですね。
サンゴの塗り壁のカラー展開にもこだわりはありますか?

(比嘉)はい、沖縄の文化を感じる5色展開で、すべて顔料を使わず自然素材を使用して色付けされています。環境配慮の視点では、焼きミスや割れがでてしまった赤瓦や、赤土、くずや粉上になった琉球石灰岩を色付け材料として購入することで、アップサイクルにもつながっています。

左から、風化造礁サンゴ・琉球赤瓦 ・勝連トラバーチン・石畳コーラル・沖縄赤土

ーありがとうございます。塗り壁商品の背景にある、「uluサンゴサイクル」というブランドストーリーについても詳しく教えてください。

(比嘉)「uluサンゴサイクル」とは、サンゴを「使って、育てる」を合言葉にサンゴの良い循環を生み出すことを目指しています。これは風化したサンゴを「使って」アップサイクルし、同時に新たなサンゴを「育てる」ための活動を行うことで、持続可能な海の保全に貢献することを意味しています。

上:uluサンゴサイクル図

ー「uluサンゴサイクル」のブランド・コンセプトはどのようにつくられたのですか?

行政が行っている企業の課題解決プロジェクトに応募し、企業ブランディングが得意なクリエイターさんのサポートを得られたことで、とても良い形に仕上げていただきました。
実は、沖縄の言葉で「ulu(うる)」はサンゴを表しています。同時にクリエイターさんからヒアリングを受ける中で、2つのサンゴ事業が循環されることから、『使って、育てる uluサンゴサイクル』というブランドとコンセプトが生まれました。

ー「サンゴの塗り壁」「uluサンゴサイクル」を通して、手応えを感じた瞬間や出来事はありましたか?

(比嘉)実際に自宅の一室でサンゴの塗り壁を使用したところ、湿気を抑える調湿効果を直接感じることができました。これは、サンゴの多孔質な構造が湿気を吸収・放湿する性質を活かしたもの。この実体験を通して、サンゴの塗り壁が快適な室内空間を作り上げてくれることを実感できました。

(安里)やはり一昨年、グッドデザイン賞を受賞したことですね。審査員の方々から高い評価をいただいたのは、サンゴの消費によってサンゴの保全・増殖を支援し、沖縄の海洋保全にもつなげるという取り組みでした。
私たちの商品は、単なる環境に優しい建材の提供だけでなく、サンゴの循環を生み出すことで、美しい沖縄の海を守るという大きな目標を持っていること。この持続可能な取り組みが評価されたことが何よりも大きな自信になりました。

ーサンゴの塗り壁を通して、これからの未来に期待することは?

(比嘉・安里)沖縄で使われる建材というのは、ほとんどが本土から入荷されるのですが、沖縄で作られた建材が本土に出荷されるケースは、ほとんどない状態です。だからこそサンゴの塗り壁を通して、沖縄にもこんな面白い建材があるんだよってことを本土の人々にも知ってもらいたいですね。
同時に、私たちの開発建材やサンゴの増殖事業を通じて「uluサンゴサイクル」のブランドコンセプトや、沖縄の綺麗な海を取り戻す活動を知ってもらえたら嬉しいです。

左から:サンゴの塗り壁材、サンゴのスティック(養殖基盤材)、美しい沖縄の海

ー今後のビジョンもしくは、今後チャレンジしたいことは?

今後のビジョンとしては、生コンスラッジ※の再生資源化プロジェクトに取り組んでいきたいと考えています。

生コンスラッジは、コンクリート製造時に発生する産業廃棄物ですが、これを単に処分するのではなく、価値のある資源として活用できないかと着目しています。
具体的には、生コンスラッジを無害化処理して、防草効果のある土壌資材として活用する取り組みを進めています。現在は実証試験の段階ですが、この産業廃棄物を有益な資源にアップサイクルできれば、環境負荷の低減にもつながると期待しています。また、生コンスラッジは、沖縄だけでなく全国的にも産業廃棄物処分として大きな課題となっているため、環境保護と資源循環の観点からも、とても意義のあるプロジェクトになるのではと今からとても楽しみです。

※生コンスラッジとは、生コンクリートを運搬した後のミキサー車を洗浄した際に発生する汚泥。

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株式会社 沖坤(オキコン)

▼お問い合わせはこちら
https://www.okikon.com/contact

 (無料)

※お問い合わせの際はCLASS1 DIGESTをみたと
お伝えいただけるとスムーズです。

〒905-2173
沖縄県名護市字久志521番地6
TEL:0980-55-2231
FAX:0980-55-2468
https://ulu353196.base.shop/
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| 編集後記
比嘉さん、安里さんのお話から、グリーン建材の枠を超えた社会的意義に溢れた会社だと強く感じました。沖縄の地域資源や廃材の活用、サンゴを使って、育てるサイクルや、新しいプロジェクトなどすべてが応援したくなるものばかりです。そんな自我作古精神でチャレンジを続ける沖坤さんのご活躍を、今後も楽しみにしています。

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