【チヨダサーキュラーせっこうボード】世界初の技術で廃石膏を100%リサイクル #09 チヨダウーテ株式会社
2024.09.12
新連載企画『メーカーさんの一推し製品』がスタート/建材メーカーを含むサスティナブルな活動を行う企業に独占取材!彼らの一推し製品についてお話を伺いました。
世界初!廃石膏を100%使用した、チヨダサーキュラーせっこうボード
1948年に創業したチヨダウーテ 株式会社(本社:三重県四日市市)は、せっこうボードの製造販売をコアビジネスに、国内に多くの営業・製造拠点を構え、近年は環境課題やカーボンニュートラルにも積極的に取り組んでいます。
その一環として、約10年前に株式会社トクヤマとの合弁会社「トクヤマ・チヨダジプサム」を設立し、廃石膏ボードのリサイクル事業を進めてきました。「チヨダサーキュラーせっこうボード」は、建築現場から回収した廃石膏ボードを原料に100%使用した、世界初のリサイクルせっこうボードになります。さらに、ボード製造時のCO2排出量を実質ゼロにする熱源や、再生可能エネルギーを使用していることも特徴です。
今回、チヨダウーテの営業本部マーケティング室の武居室長と奥岡さんに、チヨダサーキュラーせっこうボードの開発経緯や今後の課題、さらなるビジョンについてお話を伺いました。
チヨダウーテ株式会社
営業本部マーケティング
室長 武居 倫太郎さん
奥岡 柚葉さん
ー会社の歴史と事業全体について教えてください。
(武居)当社は、1948年に三重県四日市市にて設立し、元々は材木商を営みながら、屋根に使うスレート瓦の製造販売を行う、同族企業でした。
その後、海外から日本に入ってきたせっこうボードが急速に広まったことをきっかけに、当社を含む多くの企業がせっこうボードの製造販売に参入していきます。しかし、その後の人口減少と建築着工数の減少により、せっこうボード業界は、大手の吉野石膏株式会社と当社の2社のみにまで縮小しました。
そのような状況の中、当社はせっこうボードの製造販売を主力事業に、国内に5支店5工場を構えて事業を展開し、従業員数も約450名まで拡大しました。また、約10年前から廃石膏ボードのリサイクル事業にも力を入れ、2023年6月に、世界初の廃石膏を100%原料に使用した「チヨダサーキュラーせっこうボード」の製造販売もスタートしました。
ーこの「チヨダサーキュラーせっこうボード」はどのような製品ですか?
(奥岡)建物の解体現場から出た廃石膏ボードを100%使用したリサイクルせっこうボードです。通常、一度せっこうボードになったものは、リサイクルしても原料に10%程度しか混合することができず、リサイクルが非常に難しい素材でした。
しかし、”廃石膏連続結晶大型化技術”によって、原料にリサイクル材の混合率を100%まで高めることができるようになり、サーキュラーエコノミーを実現しました。この技術は特許も取得しており、当社だけの特別な技術となっています。
さらに、「チヨダサーキュラーせっこうボード」は原料だけでなく、ボード製造時にも木質バイオマス燃料や再生可能エネルギー由来の電力を積極的に使用し、CO2排出量が実質ゼロの、カーボンニュートラルを実現しています。
ー廃石膏ボードのリサイクル事業を始めたきっかけはありますか?
(奥岡)近年の社会的背景や業界課題がきっかけです。下のグラフにもあるように、今後、建物の解体の加速に伴い、廃石膏ボードの排出量も右肩上がりになると予測されています。一方で、原料となる天然石膏の年間輸入量は200万トン以上あり、石炭火力発電所などから副産される化学石膏の供給も減少傾向にあります。
このため、天然石膏に頼らない、廃石膏ボードの再利用化が求められており、チヨダウーテでは、約10年前からこのリサイクル事業を進めてまいりました。
ーそのような経緯だったのですね。株式会社トクヤマさんと共同に至った背景はありますか?
(奥岡)実は、一度使用されたせっこうボードを粉砕すると、石膏の結晶が粉になり、品質が担保されないんです。そのため、解体した石膏を再結晶化する特許技術を持つ、株式会社トクヤマと2011年に共同開発をスタートしました。
共同開発の結果、石膏の結晶を大きくする大型結晶化に成功します。同時に量産化も確立し、廃石膏ボード由来の原料をせっこうボードに最大100%まで配合することが可能になりました。この技術によって、一度使用された廃棄物の再資源化が実現できるようになったのです。
左から廃石膏ボードを分別したせっこう、結晶化技術によって再生したせっこう
ーこの技術は大きな強みですね。「チヨダサーキュラーせっこうボード」には他にどのような強みがありますか?
(武居)「チヨダサーキュラーせっこうボード」は、SuMPO環境ラベル※「SuMPO EPD」や「エコマーク※」の認証を取得しています。これらの第三者認証を取得しているため、製造時の実質カーボンニュートラルや環境負荷の低さを、客観的なデータで示すことができるのが大きな強みです。
また、お客様の視点から見ると、100%リサイクル素材を使用しているため環境負荷が低く、さらに製品使用時のCO2排出量が通常のせっこうボードの約1/4まで抑えられるのも特長です。
※SuMPO環境ラベル「SuMPO EPD」とは
ISO規格に基づいた、カーボンニュートラルとサステナビリティのための
透明性と信頼性の高い製品環境ラベル
※エコマークとは
生産から廃棄にわたるライフサイクル全体で環境への負荷が少なく、環境
保全に役立つと認められた商品につけられる環境ラベル
ー第三者の認証があることは信頼や安心感にも繋がりますね。
この廃石膏ボードを使用したサーキュラーエコノミ―の課題はありますか?
(武居)一番の課題は、“廃石膏ボードの安定的な回収ができるか?”という部分です。解体現場から出た廃石膏ボードであっても、建物の解体時に出る砂やガラスなどが混ざってしまうと、リサイクルは出来なくなります。一方で、解体業者さんの現場では、いかに迅速に建物を壊すかという所が仕事になるため、私たちの取り組みを理解してもらうこと。そして一定の品質の廃石膏ボードを私たちの工場に持ってきていただくことが、この循環型システムを実現する上で、最も重要な課題となっています。
左から解体イメージ、廃石膏ボード資源
ーこの課題に対して、チヨダウーテさんとしては、今後どのような働きかけが必要だと感じますか?
(武居)私たちができることとしては、まず、せっこうボードを多く使用している建物のオーナーに対してアプローチすることが重要だと考えています。特に、大規模な店舗の建て替えなどスクラップ&ビルドを行っているオーナーに対して、この循環型システムの意義を訴えていくことが必要だと思っています。
その理由は、解体の依頼主である建物のオーナーが、解体業者に対して、リサイクルの仕組みがあるので廃棄せずに、トクヤマ・チヨダジプサムに持ち込んでほしいと事前に指示してもらうことで、この循環が成立するためです。そのためにも、解体の依頼主に、このサイクルの循環によって、解体時の最終処分比率を減らし、カーボンニュートラルにも貢献できるという理解と協力を得たいと思っています。
ーありがとうございます。最後に今後のビジョンやチャレンジしたいことを教えてください。
(武居)やはり、私たちの活動をより多くの建物のオーナーに認知・理解していただけるよう、この取り組みを積極的に訴えていきたいと思っています。そして、私たちの活動が社会課題や環境問題の解決に貢献し、次世代につないでいけるよう、メディアなどを通じてPRしていきたいですね。
(奥岡)北海道の室蘭工場では、サーキュラーエコノミー実現に貢献する取り組みとして、原料に50%以上の再生材料を使用した「チヨダ北海道せっこうボード」を開発しました。この「チヨダ北海道せっこうボード」のように、チヨダウーテで製造するすべての製品でリサイクル材の利用割合を上げていくことが今後の目標です。
同時に、まだ実質カーボンニュートラルに至っていない工場も一部あるため、全工場におけるCO2排出量の削減にも取り組んでいきたいと考えています。
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チヨダウーテ株式会社
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| 編集後記
チヨダウーテさんが取り組む、廃石膏ボードのリサイクル事業や、カーボンニュートラルへの取り組みについて、とても意義深いお話をお聞きすることができました。
特にお二人のお話から印象的だったのは、廃石膏ボードの安定供給に向けた取り組みについてです。建物所有者の理解と協力を得られることが、社会課題や環境問題の解決につながっていくというお話は一番の学びとなりました。そして、今後より多くの建物所有者が、チヨダウーテさんの理念に共感し協力してくれることを期待しています。