【NURU DENIM】デニム端材をアップサイクルした塗り壁材 #11 日本エムテクス株式会社
2024.10.15
連載企画『メーカーさんの一推し製品』/建材メーカーを含むサスティナブルな活動を行う企業に独占取材!彼らの一推し製品についてお話を伺いました。
デニム端材をアップサイクルした
思わず自慢したくなる塗り壁材「NURU DENIM」
日本エムテクス株式会社は、国内でも類を見ない、アップサイクルを専門としたインテリア建材メーカーです。工事の請負などを主要事業とする建設会社として創業しましたが、2003年より世の中の廃棄物をアップサイクルして壁材などの建材へ生まれ変わらせる製造販売事業へと舵を切り、今年で28期を迎えました。
同社では、卵の殻を原料とした製品が有名ですが、2023年に新しい試みとして、工場から排出されるデニム端材を建材としてアップサイクルした塗り壁材「NURU DENIM」の企画開発にチャレンジ。発売当初から現在まで多くの反響を呼んでいます。
今回、代表取締役の三浦さんに、「NURU DENIM」ができた背景や、今後のビジョンやチャレンジしたいことについてお話を伺いました。
日本エムテクス株式会社
代表取締役
三浦 征也さん
ー早速ですが、日本エムテクスさまの部署や事業について教えてください。
当社の部署は営業開発部と企画部、総務部の3つで構成しており、WEB製作からパッケージデザインなどもすべて社内で行っています。なかでも商品プロデュースに関しては、私自身が行っている分野で、近年ますます企画開発に目覚めていますね。このアップサイクル事業を始めたのが2003年ですが、20年前にはそのような言葉もなく、言葉選びが難しかったことを覚えています。
アップサイクル事業としては、卵の殻をはじめ、繊維やプラスティックといったゴミが出るなかで、様々な企業さんから「三浦さん何かできますか?」と相談を受け、企画を考案しています。行っていることの基本としては、建築材料にアップサイクルするという内容が中心です。
ー今回ご紹介いただく「NURU DENIM」でデニム端材を使用したきっかけを教えてください。
デニム端材を使用するきっかけとなったのは、同じくアップサイクル製品を手がけている仲間から、国内のデニムメーカーがゴミに困っていると相談を受けたことです。そこで詳細を聞いてみると、デニムの製造過程で排出される生地の端材が年間数百トンもあることが分かりました。
ーここからどのように商品開発が進んでいったのですか?
このデニム端材を細かくして何かできないか?と考えていた時、そういえば、高度成長期に、繊維壁※が普及したことが頭をよぎったんです。繊維壁の原料となる繊維は、洋服の製造過程で出てくる糸くずなどを使用しており、その本質には環境配慮への想いがありました。この想いに着目して、工場から出るデニム端材を繊維壁として復刻できると面白いし、塗り壁であれば自社の左官材の開発ノウハウを活かせると。そこで自ら試作を重ねていった結果、これはいけそうだ!と確信し、商品開発が進んでいきました。
左からデニム端材と細かく破砕したデニム
※繊維壁とは、紙繊維、化学繊維などに糊を混ぜ、水で練ったものを塗った室内壁
ー繊維壁の復刻やその背景のストーリーも素敵ですね。「NURU DENIM」の商品の特徴や機能性があれば教えてください。
「NURU DENIM」は、落ち着いたシックな空間を演出する、インディゴブルー、ユーズドブラック、ストーンウォッシュの3色を用意しており、仕上がりのテクスチャーとしてもデニムの質感を残しています。また、生活の中でできたキズや穴も、水を吹きかけることで柔らかくなるため、DIYでの補修が可能です。さらに、古くなったら水をかけ再度練り直せば、左官材として再利用もできます。
機能面では、吸放湿性に優れ、珪藻土と同等の吸湿性を備えているため、室内の湿度調整にも効果的です。
ーアップサイクル商品でありつつ、再利用できる仕組みも面白いですね。「NURU DENIM」の開発において、行き詰まりや課題などはありましたか?
一番苦労した部分は「NURU DENIM」の不燃認定を取得するまでの過程ですね。通常、繊維素材から不燃認定を取得するには、不燃材(薬剤)を染み込ませる方法と、燃えない石などを配合する方法の2種類しかないんです。
しかし、環境への配慮や安全性を重視し、自然由来の素材を使用したいというこだわりを持って開発を進めた結果、不燃認定を取得することができました。特に、店舗や商業施設などでは不燃認定が必須となることは設計段階から意識していたため、この不燃認定の取得は「NURU DENIM」が幅広く採用されるポイントになったと思います。
ー実際に「NURU DENIM」発売後、どのようなお客さまから問い合わせがありましたか?
半数以上が企業の方々ですね。BEAMSさんやRight-onさん、MUJIさん、BMWさんなど大手企業をはじめ、さまざまな企業に採用いただきました。どの企業の方々も「NURU DENIM」の企画背景やストーリーに惹かれ、採用いただけたと自負しています。なかでもBMWさんでは、環境性能を大事にした店舗をつくりたいということで、国内260店舗で「NURU DENIM」をはじめ、当社のエッグウォールも採用いただきました。
ー人の心を動かす背景がある商品だからこそ「NURU DENIM」は大ヒットしたんですね。
実際に開発当初から、これは色んな要素が混ざりあってインパクトすごいんじゃないか!と興奮していました(笑)。リリース前からヒットの予感はしていたので、広報活動やパッケージにもかなり力を入れましたね。写真にあるサンプル用のパッケージデザインも社内のデザイナーと作成したもので、遊び心もプラスした仕上がりでとても気に入っています。
あとは、こういったアップサイクルの商品開発で大切なのは、『人に伝えたくなる』というところですね。「NURU DENIM」でいうと、“これ、デニム工場で捨てられるデニム生地を使った塗り壁なんだよ~”という感じで、相手を嫌な気持ちにさせない自慢。つい『人に伝えたくなる』ストーリーが、アップサイクル商品において一番大事なところだと思っています。
左から「NURU DENIM」のサンプルパッケージと3色のサンプル
ー「NURU DENIM」を通してこれからの未来に期待することはありますか?
僕らの活動って、人に影響を与える事だと思っているんです。今の時代は小学生から大学生まで、さまざまな学生が課外授業の一環として、アップサイクルの勉強をさせて欲しいと訪問してくれる機会があります。
そういった未来を担う子供たちと関わる中で、「NURU DENIM」のようなアップサイクル商品が、これからの環境問題に貢献できるといった、いい影響を与えられることを期待しています。
ーありがとうございます。最後に、三浦代表の今後のビジョンやチャレンジしたいことを教えてください。
現在、当社では年間30トンのゴミを価値に変えているのですが、この量を2030年までに100トンに増やすことを目標にしています。もちろん売上や利益も大切ですが、それ以上に大事なのは、いかに多くのゴミを商品の原料として、価値に変えられるか?ということです。
あとは、アップサイクル専業企業で儲かるの?と聞かれることがありますが、当社は28期を迎え、会社の存続こそが証明になると考えています。だからこそ、ゴミを価値に変える事業だけで、売上と利益が出せるということを証明していきたいですね。
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日本エムテクス株式会社 (NURU DENIM)
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| 編集後記
実は、我が家の内装では日本エムテクスさんのエッグウォールを使用しており、来客時にはついつい自慢してしまう壁紙なんです。今回の「NURU DENIM」もデザイン性をはじめ、繊維壁の復刻からアップサイクル+リユース、そして思わず自慢したくなる魅力に溢れた塗り壁だと感じました。同時に取材を通して、三浦代表の企画に対しての努力や熱意、そして今後の未来に向けた温かい思いにも心が動きました。さらに、三浦代表が2022年5月30日のゴミゼロの日に設立した一般社団法人『GOMITAIJI』では、建材の垣根を超えたゴミを価値に変えるという活動も進行中です。アップサイクルに興味がある方はぜひ、こちらも覗いてみてください。https://www.gomitaiji.or.jp/ 今後もますますのご活躍を楽しみにしています。