【里山ユニット】都市に小さな里山を実現 #15 株式会社ゴバイミドリ

2024.12.19
連載企画『メーカーさんの一推し製品』/建材メーカーを含むサスティナブルな活動を行う企業に独占取材!彼らの一推し製品についてお話を伺いました。

里山の森を小さく切り取ったような、心地よい景観を実現する「里山ユニット」

株式会社ゴバイミドリは、『日本従来の里山の風景を、都市の中にも増やしていきたい』という想いから、ランドスケープデザイナーの田瀬理夫(たせみちお)さんと長年協働してきた、宮田生美(みやたふみ)さんによって設立されました。
今回ご紹介する「里山ユニット」は、キューブ状の金網に里山の草木を混植した移動もできるユニット商品です。ラインナップは、オンラインショップでも気軽に購入できる規格サイズをはじめ、オーダー制作も可能。一人ひとりの依頼者やプロジェクトごとに寄り添いながら、緑化や四季の楽しみを実現させています。

今回、株式会社ゴバイミドリの代表取締役である宮田さんに、事業をはじめられた想いや「里山ユニット」の特徴、今後のビジョンついてお話を伺いました。

 

株式会社ゴバイミドリ
代表取締役
宮田 生美さん

ー早速ですが、宮田さんがゴバイミドリを立ち上げたきっかけや背景について教えてください。

一番最初のきっかけは、私の大切な友人が入院した際、病院の窓からビルの街並みしか見えず、緑ある風景を恋しがっていたことでした。もう一つのきっかけは、ランドスケープデザイナーの田瀬理夫さんとの出会いです。私がまちづくり系のコンサルタントとして環境デザインに関わるようになった頃、田瀬さんと共にプロジェクトを進める機会が増え、優れた緑化設計を行う田瀬さんの技術や理念に深く感銘を受けました。

さらに、田瀬さんに自宅の庭を設計していただいた際には、小さな一軒家でも田瀬さんのシステムを使うことで、こんなにも素晴らしい庭が実現できることに感動しました。この二つのきっかけが重なり、田瀬さんが開発した技術をベースに緑化事業を立ち上げたいと相談したところ、背中を押していただき、「株式会社ゴバイミドリ」を立ち上げることになりました。

ーそのようなきっかけだったのですね。ゴバイミドリさまの事業について教えていただけますか?

日本の在来植物を用いて都市に緑を増やす緑化事業を展開しています。「里山の森を切り取ったような景観を都市に映し出す」という基本コンセプトのもと、多様な緑化に取り組んでいます。主な事業内容としては、緑化システムを活用した技術協力、さらに規格サイズやオーダーサイズの里山ユニットの販売と施工です。そのなかでも、規模の大きな植栽はユニット化せずに現場で施工します。特に都市での緑化は制約が多いですが、これまで緑化が難しいとされていた場所にも果敢に挑戦し、地域の良質な緑を、都市を中心にお届けしています。

ー今回ご紹介いただく里山ユニットとはどのような製品になりますか?

里山ユニットは、その地域の里山を小さく切り取ったような景観を実現する、キューブ型の金網プランターです。ランドスケープデザイナーの田瀬さんが開発した「ウエーブメッシュパネル※1」と「アクアソイル※2」を組み合わせた植栽基盤により、プランターの側面にも植物を植栽できることが大きな特徴となっています。
さらに、キャスターを付けることで設置や移動が容易となり、水やりの頻度も少なくて済むため、初心者の方でも気軽に緑化を楽しむことができます。

※1 ウエーブメッシュパネルとは、ツル植物が絡みやすい断面形状を持ち、軽量かつ耐久性の高いキューブ型の金網。
※2 アクアソイルとは、約40年前に開発された屋上緑化用の土で、非常に軽量で保水性が高く経年劣化しない特徴を持つ。

左から、里山ユニットの保管風景と里山ユニットのサイズ一例

ーゴバイミドリさんがベースにしている田瀬さんの緑化ノウハウには、どのような特徴がありますか?

例えば、アクアソイルの使用方法については、詰め方や硬度の調整、ミネラルの配合などを田瀬さんから指導していただきました。これらはすべて田瀬さん独自のメソッドがあり、ゴバイミドリの標準仕様のベースとなっています。
田瀬さんの緑化事業では、地域の在来種を使用し、園芸種や外来種は使わないという考え方が基本です。彼は都市環境に自然を取り入れるためのデザインや技術を開発し、持続可能な緑化の設計を推進しています。

このような背景から、ゴバイミドリでは田瀬さんの考えに共感し、緑化プロジェクトを忠実に進めています。

左から田瀬さんが設計されたアクロス福岡、ゴバイミドリオフィスのベランダの庭

大型の緑化工事の風景

ーありがとうございます。里山の在来植物を使用するにあたり、各地域とのネットワークはどのように作られましたか?

里山の植栽を営んでいる生産農家さんとのつながりは、主にご紹介が中心です。一方で、ネットワークがない地域では、人とのご縁を大切にしながら探し続けることで、地域ごとに少しずつネットワークが広がっています。また、このようにして出会えた農家さんは、良い苗を育てていることが多く、今後に続く良い関係性が築けています。

写真は栃木県の馬頭の森。里山の環境保全のお手伝いとして林床管理委託を行い、森の手入れをしながら植生の復元を図る。その一部は、里山ユニットの苗として使われている。

ー真摯に探し続ければ、必ず良い出会いに巡り合えるということですね。里山ユニットで混植する植物については、リクエストやご相談は可能ですか?

もちろん可能です。日本の在来植物は約5,000種類あり選択肢は多様ですが、通常はお任せいただくことが多いですね。基本になるのは里山の景観をなるべく小さく映すことなので、里山の景観を再現した配置を行い、高木、低木、潅木(かんぼく)、下草や草花を自然な形で組み合わせます。事例として、隣のマンションに近い場所には、高木の常緑樹を使い、その手前に潅木の落葉樹を配置して、目隠し効果を高めるといったご提案もさせていただいております。

小型の里山ユニットでは、約10種類の植物を使用しますが、ベランダや庭のような規模の大きいユニットでは、100種類ほど使うこともあります。そのほか、お客様からは、”白い花を取り入れたい”、”秋に実を楽しめる植物がほしい”といった要望も多いので、そのようなリクエストも気軽にお伝えいただければと思います。

ゴバイミドリオフィスからみるベランダの景色、左から白い花や実の成る植物の一例

ーゴバイミドリさまが携わったプロジェクトで特に印象的だった施工を教えてください。

田瀬さんが設計された東京都の陸上競技場ですね。この競技場は、コンクリートを極力使用せず、周囲のフェンスや壁、座席まで植物で構成されています。このような植物を用いた建築は、田瀬さんの先駆的なアプローチであり、非常に感銘を受けました。
また、コンクリートが多い都市においては、ヒートアイランド現象の緩和にも植物が効果を発揮します。植物は周囲の空気を冷やし、熱環境を軽減するほか、ゲリラ豪雨時には雨水を土に浸透させて冠水を防ぐことができるため、環境面から見ても、今後の緑化設計の重要性は高まると感じています。

東京都のAGFフィールド

ーこれからの未来に期待することやビジョンはありますか?

ゴバイミドリでは、都市にも緑を増やすことで、人工物に囲まれた生活から自然を感じる環境を届けていきたいと考えています。植物があることで季節の移ろいを感じていただいたり、冬至には柚子湯に入るといった日本文化にも親しんでいただきたいですね。

さらに、環境問題である都市の熱環境やヒートアイランド現象、ゲリラ豪雨に対しても、都市緑化を通じて持続可能な未来に貢献できればと考えています。

ー最後にCLASS1DIGESTの読者に向けてメッセージをお願いします。

私たちの里山ユニットは30cm角の小さなサイズからお届けすることが可能で、規模の大小に関わらず、様々な人が緑に親しめる製品を提供しています。
そのなかで、「こんな使い方もあるんですか?」というお客様からの声もいただくので、読者の皆さまからも「こんな使い方をしてみたい」とか「こんな形状はできる?」といったご意見を頂けると嬉しいです。まずは、できるかどうかは置いておいて、ぜひ一度、気軽にご相談いただければ幸いです。

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株式会社 ゴバイミドリ
▼お問い合わせはこちら
https://www.5baimidori.com/info.html

※お問い合わせの際はCLASS1 DIGESTをみたと
お伝えいただけるとスムーズです。

〒162-0064
東京都新宿区市谷仲之町2-10 合羽坂テラス #4
TEL: 03-5362-3399 
FAX: 03-3226-2572
https://www.5baimidori.com/index.html
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| 編集後記
今回ご紹介したゴバイミドリさんの「里山ユニット」は、CLASS1 ARCHITECT Vol.19でも掲載された製品です。取材を通じて、宮田さんの創業のきっかけや田瀬さんとの出会いが、宮田さん自身の大きなターニングポイントになっていることが印象的でした。また、取材中に見えた緑あふれるお庭もとても素敵で、本当に里山の小さな景観が再現されていると感じました。このような素晴らしい緑化プロジェクトがさらに広がっていくことを期待し、今後のご活躍を応援しています。

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