襖(ふすま)の魅力~「こんなときはどうする?」症状別の修理&リメイク方法の紹介~
次の方におすすめの記事です。(読了時間…6分)
- 襖(ふすま)の存在価値が知りたい
- 修理・アレンジ方法が知りたい
和室の入り口といえば「襖(ふすま)」。日本人なら1度は触ったことのある引き違いの建具です。
最近では和室が減ったこともあり、ふすまの需要も減りつつありますが、今回は
- ふすまの歴史や種類
- メンテナンス・修理のコツ
- ふすま紙を張り替えるタイミングやDIY方法
など、襖(ふすま)の魅力にせまります。
歴史ある襖(ふすま)の魅力
日本で古くからあるとされる襖(ふすま)。そもそもどういう特長があってどんな仕組みになっているのか調べてみました。
襖(ふすま)とは
ふすまとは、木で骨を組み、両面に紙・布を貼って引き手を取り付けた和建具のこと。部屋の間仕切り、防寒や風通しを良くするために使われます。軽くて取り外しができるので、隣同士の部屋を大きくしたり狭くしたりなど、部屋のスペースを自由に調節できる役割も担っています。
また、保温・調湿機能もあるため、防寒・カビ防止などの効果もあります。和室の押入れにふすまを使う理由は、中に入れたものを湿気から守るため。季節の変化で温度に差がある日本にとって、最適な建具として昔から利用されています。
参考 : 襖|日本文化いろは事典、広辞苑
ふすまのはじまりは平安時代
ふすまのはじまりは、平安時代といわれています。平安時代の邸宅は寝殿造りが典型的。内部が丸柱が立ち並ぶだけの広間様式で季節の変化に応じて部屋を仕切る際には、屏風(びょうぶ)や几帳(きちょう)、障子等を用いました。
その障子のなかでも、寝る場所で使われたものを「ふすま障子」と呼びます。その原形は板状の衝立(ついたて)に絹織物を張ったものといわれており、それらが改良され絹織物の代わりに中国から伝わった「唐紙(からかみ)」が使われるようになり普及しました。平安時代末期にはすでに引き違いのふすまが貴族の住居に登場しています。
その後、12~16世紀の鎌倉・室町時代には天井も張ったり、畳を敷き詰めることが普及します。16~17世紀の安土桃山時代・江戸時代初期にはふすま絵(虎・鳳凰・鷹など)も描かれるようになり、武家の強さを演出する役割を担いました。
江戸時代後期には一般庶民にも広がり、さまざまな改良を重ねながら軽量なものが完成します。
参考 : ふすまの歴史❘一般社団法人 日本襖振興会
1枚板じゃない!ふすまの構造
出典元 : 和ふすまカタログ| 一般社団法人 日本襖振興会
出典日 : 2018年9月19日
ふすまの構造は、平安時代から現代まで基本的に変わっていません。
襖の種類
出典元 : ふすまの種類 | 一般社団法人 日本襖振興会
出典日 : 2018年9月19日
ふすまには、中身(下地と呼ばれる)がいろいろあります。
種類 | 概要 |
---|---|
本ふすま | 何度でも張り替え可能で、歴史の長いふすま。複雑な構造なだけに、量産できないのが難点。表面を押すと、障子の桟(さん)のような枠組みがさわって感じられます。 |
組子ふすま | 木製の枠・タテ3本ヨコ11本の組子・下張紙・胴張紙で構成されたふすま。古くから今も多く利用されているもので、反り・ねじれに強いため日本の気候風土に適したふすまだといわれています。何度でも張り替え可能。 |
チップボールふすま | 簡易的な組子に、チップボールをホットプレス機で張ったふすま。本格的な組子ふすまよりも使う本数は少ないですが、骨縛り・ベタ張りの手間を省けるのがメリットです。 |
発砲プラスチックふすま | 発砲プラスチックをベースに、チップボールとアルミ箔を貼ったふすま。ふすま紙をべた張りしてふすまの縁とボンドで接着するため、張り替えがむずかしいといわれています。軽量で量産ができてコストが安くすむので、最近の住宅に多く採用されています。 |
ダンボール芯 | 3~5層ほどのダンボールをベースに、アルミ箔を張ったふすま。発砲系ふすまと同様、ふすま紙べた張り&ふすま縁ボンド接着で、張り替えがむずかしいといわれています。 |
板(ベニヤ・戸)ふすま | 組子の上にベニヤを張ったふすま。重くて頑丈で、表面をたたくと木の音がします。表を襖紙・裏を壁紙などアレンジがきくので、和室・洋室のあいだに設けられることが多いふすまです。 |
単板ふすま | 木の枠の中に簡易的な組子(15~20本)を組み、その上にとても薄い板(ラワン材)を張ったふすまです。何度でも張り替え可能。主に、中部地方で取り入れられています。 |
参考 : 襖の外観と構造・襖(ふすま)とは・襖・京都にしむら
参考 : 襖の構造や種類 | 株式会社菊池襖紙工場
襖を選ぶときのポイント
下地の上から張る「ふすま紙」は、バラエティー豊かになっています。シックハウス症候群対策・消臭機能・防炎加工など機能性の高いふすま紙も登場しています。
次に選ぶのは縁・引手。引手のかたちは丸・楕円・角型が一般的。動物・植物のかたちをしたものもあります。材質は、金属製(金・銀・銅・鉄・真鍮など)、木製(桑・黒檀・桜など)、陶製・漆の塗りものなどさまざま。縁も、漆塗り・カシュー塗りなどがあります。安価なふすまが良ければ、プラスチック製。
1つずつ別のものを組み合わせて、完全にオリジナルのふすまが作れる場合もあります。
参考 : 和室に欠かせない襖(ふすま)。その構造や歴史を聞いてきた | 住まいの「本当」と「今」を伝える情報サイト【LIFULL HOME’S PRESS】
襖のお手入れ方法
ふすまをキレイに保つため、日々のお手入れも大事です。
ふすまの足元である敷居は、サッシとまではいきませんが若干の凹みがあります。ほこり・ゴミがたまりやすいです。畳の上は、傷みにくくするために掃除機やかたく絞った雑巾で掃除をしますよね。それと同様、ふすまの敷居もできるだけ水が吸い込まないようにするのがポイントです。
また、ふすまは湿気に弱いので、濡れた服をかけたり水拭きをしたりするのはNG。染みや斑点の原因になります。敷居がすべりにくくなったら、シリコン系のすべり剤(液体)やイボタ蝋をスーッと塗ってあげましょう!
引手の手垢は、白くてやわらかい消しゴムを使ってゴシゴシと。ふすまの全体的な掃除が終わったら、キレイさをキープするために「防水スプレー」が有効です。
参考 : 和室に欠かせない襖(ふすま)。その構造や歴史を聞いてきた | 住まいの「本当」と「今」を伝える情報サイト【LIFULL HOME’S PRESS】
襖の寿命は10年前後
ふすまやふすま紙は、たとえ毎日開け閉めをしなくてもいずれ寿命がやってきます。日当たりや温度・湿度の変化など環境によって若干のちがいはありますが、張り替えの目安は10年前後だといわれています。
襖を長持ちさせる方法
ふすまを少しでも長持ちさせたいなら、ふすま紙の吸収した湿気をよく発散させてあげるのがポイントです。湿気の元になるような服・タオルなどをなるべくふすまに触れさせず、部屋の換気をこまめに。湿度の高い日はふすまをあけっぱなしにしてカビの発生を防ぎます。
ただ、開けっ放しにした状態で何日も放置しておくのはNG!重なったままだと反ってしまったり、片面だけが日焼けなどで劣化していきます。
ふすま紙を張替えるタイミング
ふすまは、表面のふすま紙を張り替えると元のキレイなふすまに近づきます。でも、数時間で簡単に終わるものではありませんよね。慣れていなければ何日もかかってしまう可能性があります。
張り替えのタイミングは、
- 冠婚葬祭(お葬式・法事・結婚式など)
- 来客・宿泊客
- 年末年始(年末大掃除・正月)
といった行事に合わせて行われていたようですが、兆しとしては
- 染み(黄色・茶色など)が大きく目立つ
- カビが生えている
- 色が変化している
- たるみ・シワがある
- 前回の張替えから10年経過している
が挙げられます。業者に依頼する、もしくは自分で張るということになります。
【症状別】襖をリフォーム!
ふすまのリフォームでキレイに元どおり!お金をかけずに自分で修理できることがあれば、チャレンジみたいと思いませんか?ふすまの症状別に、DIYの方法を見ていきましょう。
破れた
猫がつめでひっかけた・物が当たって穴が開いたなど、和紙を使ったふすまならではの悩みが「破れ」。小さいものであれば、その部分だけを修理することが可能です。
ふすま紙の交換方法はこちらの動画がすごくわかりやすいです。
引用元 : ふすまの張替え – Olympic ホームセンターおうちDEPO
引用日 : 2018年9月19日
すべりが悪い
ふすまが開け閉めしづらいのは、敷居が原因です。掃除機などで日々のお手入れをしつつ、それでも改善しないときは「敷居滑りテープ」を利用しましょう。ホームセンターやAmazon・楽天市場などに売っています。
引手がぐらぐら
ふすまの開け閉め時に触る部分(引手)が不安定なときも、自分で修理することが可能です。引手は「釘」「のり」のどちらかが使われているので、はじめにチェック!釘の場合は丁寧にバールで抜き、打ち込み直します。のりの場合はマイナスドライバーなどを入れて外し、木工用ボンドでのり付けし直します。
本体の交換が必要なときも
「ふすま自体のかたちが変!」「大きな穴が開いてしまった!」
ふすまの枠が変形したり自分で直せないような大きな穴が開いたりしたら、修理のプロに任せましょう。状態を見てもらい、場合によってはふすま本体の交換が必要なときもあります。これをチャンスに、自分好みのふすま・ふすま紙にしてみるのも良いですね^^
【DIY】壁紙を使って洋風にリメイク
出典元 : 株式会社フィル
出典日 : 2018年9月19日
和室の入り口はふすま。でも、リビングなど洋室との隣り合わせで、洋室側から見ると雰囲気が合っていない…と感じている人がいるかもしれません。ふすまは、ふすま紙が張り替えられるように、壁紙を直接張ることも可能です。和室のリフォームや衣替えの季節など、部屋の変化を楽しみたい人や、片面は洋風にしたい人にピッタリなリメイク方法です。
楽天市場のショップ「壁紙屋本舗」は、リメイク用の壁紙をたくさん出品しています。張れる場所は住宅内のキッチン・リビング・水回り・家具・和室などさまざま!洗えるロールスクリーンやタイル調・大理石調の壁紙もあります。
もちろん、ふすまに使える「ふすま紙」もバラエティー豊か。両面テープや糊を使って張るだけで特別な技術は不要です。
▼こちらで詳しいDIY方法が紹介されているので、ぜひ1度ごらんください^^
参考 : ふすまの上にも壁紙は貼れます!ふすまの上から可愛い壁紙を貼って、和室を洋室にリフォーム | リフォームするなら壁紙屋本舗
ふすま紙の販売メーカー・商品には、どんなものがあるの?
ふすまやふすま紙を製造・販売しているメーカーの紹介です。
DANK|ダンフスマ
出典元 : 株式会社ダンク
出典日 : 20118年9月19日
ふすまの1つ「ダンボールふすま」を製造しているDANK(ダンク)。強化ダンボールを利用した「ダンフスマ」は、強度バツグン・防音&断熱効果ありの耐久性にすぐれたふすまです。ダンボールの上は湿気防止・防火性能のあるアルミ箔。さらに、鉄・樹脂のフレームを採用しているので反り・ゆがみが防げます。注文は、採寸&見積りのオーダーメイド!自社工場にて1枚ずつていねいに製造をしてくれます。
株式会社キツタカ|光
出典元 : 株式会社キツタカ
出典日 : 2018年9月19日
畳・ふすまの総合メーカーが販売しているオリジナルふすま紙「光」。高品質ながらも安価でお求めやすいのが特長です。全25種類のカラーから、好みの1枚をチョイス!単色だけじゃなく、花などの模様が入ったものもあります。
ルノン株式会社|新鳥の子襖紙 ルノン凛 第2集
出典元 : ルノン株式会社
出典日 : 2018年9月19日
凛(りん)としたイメージ、凛としたたたずまいを演出したい!そんな人におすすめなのが、2012年度グッドデザイン賞を受賞しているルノンのふすま紙「凛」。花・木目調・縞模様など、豊富なデザインがあります。切り売りができるので、ふすまの面に模様のちがう2枚を組み合わせることも可能!
ふすまも楽しめる
襖(ふすま)
- 平安時代~現代まで同じ構造の歴史あるトビラ
- ふすま紙・引手・縁の組み合わせでいろんなふすまができる
- 程度によっては自分で修理することが可能
- DIYで、過ごしやすい空間づくりが簡単に楽しめる
ふすまを楽しむために、季節ごとにふすま紙を張り替えたり夏場は涼しい簀戸に変える人もいます。たしかに、ふすま紙や引手のかたちを変えるだけで部屋の雰囲気がガラっと変わりそうです。
ふすまは、日々のお手入れを欠かさずに、直す部分があれば自分で修復可能。雰囲気に飽きたら、ふすま紙を張り替えればOKですからアレンジ次第で、空間が新鮮になりますね。
ちなみに、私の家のふすまは和室側の引手を「丸」に、リビング側の引手を「長方形」にして雰囲気を変えています。敷居の端っこには案の定ホコリが…。