【GLASS : #04】こんなに選べるガラス製品。あなたが求めるガラスはどれ?

こんにちは。駆け足で冬が近づいてきましたね。建材ダイジェスト編集部です。建材を様々な視点から解き明かすシリーズ「Material Journey (マテリアルジャーニー)」。第3回はガラスのユニークな性質をご紹介。第4回は、ガラス製品の色々な種類をお伝えします。

私たちの周りには、様々な種類の建築用ガラスがあります。それらは何となくそこにあるのではなく、目的があって設置されています。どんなガラスが、何のためにあるのか。それを探っていきます。

建築用ガラスは、大きく3つに分けられます。「板ガラス」「ガラス成形品」「ガラス繊維」

建築用ガラスの種類

以下、それぞれの種類について見ていきましょう。

【板ガラス】建築用ガラスの主役

板ガラスの種類

板ガラスは、現代建築にとって必要不可欠な建材。法律上、建築物には必ず窓を設置しなければいけません。そのため窓にはめる板ガラスが必要となります。

需要が多いので生産量も多く、種類も豊富。それぞれ順番にご紹介しましょう。

最もポピュラーな板ガラス : フロートガラス

フロートガラス

フロートガラスは最も使われる機会の多いガラスです。#1でご紹介した「フロート法」によって作られることから、この名前が付きました。フロート法は、液体のガラスを溶融金属に浮かべて作る方法です。

▼より詳しいフロート法の説明は、#01をご覧ください。

大量生産できるので安価。窓を施工するとき、特別な要望がなければこのガラスが使われます。

フロートガラスの使いどころ

  • とりあえず窓ガラスが欲しい、交換したい。
  • 費用を安く抑えたい。

火災に備えて : 網入りガラス

網入りガラス

網入りガラスは、内部に網を入れたガラス。もし割れたときは、網がガラスを支える芯の役割を果たすので破片が飛び散りません。ベランダや防火戸など、破片が飛散すると危険な場所に使われます。

網入りガラスはロールアウト法により製造。この製造法についても、上記#01でご紹介しています。

網入りガラスの使いどころ

  • 火災に備えたい。
  • 2階以上の窓が割れたとき、破片が飛散しないようにしたい。

強くなった板ガラス : 強化ガラス

強化ガラス
ダイニングテーブルに!「強化ガラス」のテーブルトップを設置した事例(兵庫県姫路市 K様) | OOKABE GLASS

強化ガラスは、フロート板ガラスに強化加工を施したもの。フロートガラスを専用の機械に通して加熱。その後、急速に冷やすことで強化ガラスになります。

▼より詳しい仕組みについては、#03をご覧ください。

テーブル天板や棚板として使われることが多い強化ガラス。もちろん下記事例のように、窓ガラスとして使うこともできます。

ショップ入口のドア窓に「強化ガラス (5mm)」を設置した事例
ショップ入口のドア窓に「強化ガラス(5mm)」を施工した事例(長野県北安曇郡 S様) | OOKABE GLASS

強化ガラスの使いどころ

  • 普通のガラスよりも丈夫な窓にしたい。
  • テーブルや棚などに使いたい。

防犯機能で安心したい : 合わせガラス

合わせガラス

合わせガラスは2枚のガラスを重ねて、その間に特殊なフィルムを挟んだものです。

二重にすることでガラスを強化。更にフィルムを挟むことで、ガラス片が飛び散ることを防ぎます。トンカチで叩いても穴が開かないので、窓ガラスを破って侵入することができません。合わせガラスが「防犯ガラス」と呼ばれる理由です。

また下にご紹介する事例のように、合わせガラスは重たい工業製品を載せる台としても使うことができます。万が一割れても破片が飛び散らないので、機械に支障を及ぼすことがありません。

加重に耐えろ!ピストンプルーバーに「合わせガラス」を使用した事例
加重に耐えろ!ピストンプルーバーに「合わせガラス」を使用した事例(兵庫県西宮市 H様) | OOKABE GLASS

▼合わせガラスについては、こちらの記事で詳しく説明しています。

合わせガラスの使いどころ

  • 窓の防犯機能を高めたい。
  • 重いものを乗せる安全な台として使いたい。

断熱のスペシャリスト : ペアガラス(複層ガラス)

ペアガラス

ペアガラスは1枚のサッシに複数のガラスをはめた製品。窓の中に空気層があることで、断熱と防音に効果を発揮。また結露防止や防犯の効果もあります。

▼ペアガラスの断熱効果については、下の記事を参考にしてください。

ペアガラスの使いどころ

  • 窓の断熱効果を高めて、快適な環境を作りたい。
  • 防音効果が欲しい。ついでに防犯も。

日差しを和らげ、色も楽しめる : 熱線吸収ガラス

熱線吸収ガラス

熱線吸収ガラスは、原料に鉄、ニッケル、コバルトなどの金属を加えて着色したガラス。太陽光を吸収して、室内に入る日差しを和らげる効果があります。建築物のガラス壁や、ショーケースなどに使われます。

熱線吸収ガラスの使いどころ

  • 商業施設やビルなど、ガラス壁を採用している施設で、太陽光の熱を抑えたい。
  • 住宅の窓ガラスでも効果あり。

キラリと光る美しさ : 熱線反射ガラス

熱線反射ガラス

熱線吸収ガラスと名前が似ていますが、製造方法と目的が違います。熱線反射ガラスは、フロート板ガラスの表面に金属酸化物の膜を焼き付けたもの。これによりガラス表面の反射率が高くなります。太陽の熱を抑えつつ、室内の明かりを保つ効果があるのです。

表面の反射率が高いということは、ガラスが光り輝いて見えるということ。美しく見える反面、少しの傷や汚れも目立つので注意が必要です。

熱線反射ガラスの使いどころ

  • 太陽光を抑えながら、採光を確保したい。
  • ガラスの映え方にもこだわりたい。

美しいガラスを楽しむ : デザインガラス

デザインガラス

デザインガラスは、様々なデザインを施したガラス。そのまんまですね。見た目や感触を楽しむ、鑑賞を目的とした製品です。

▼デザインガラスの中でも特に人気なのが「昭和型板」シリーズ。下の記事でご紹介しています。

▼また、デザインガラスはペアガラスにすることも可能。こちらの記事をご覧ください。

デザインガラスの使いどころ

  • 様々なデザインのガラスで、目を楽しませたい。
  • お洒落な空間作りをしたい。

煌びやかなステンドを自宅にも : 次世代ステンドグラス

次世代ステンドグラス

次世代ステンドグラスは、ステンドグラスの色合いやデザインを再現した板ガラス。一般的にステンドグラスは高価なので、なかなか手が出せません。次世代ステンドはステンドグラスと遜色ないデザインで、安く手に入れられる製品です。

次世代ステンドの使いどころ

  • 比較的安価でステンドグラスを飾りたい。
  • 自分好みのデザインを作って欲しい。

以上で板ガラスは終了。続いてガラス成形品をご紹介します。

【ガラス成形品】ユニークで実用的

ガラス成形品

ガラス成形品は、「ガラスブロック」「プリズムガラス」の2つに分けられます。

分厚さなら誰にも負けない : ガラスブロック

ガラスブロック

ガラスブロックはその名の通り、ブロック状(箱型)のガラス。特徴は何と言ってもその分厚さで、断熱、防音、防火性能があります。光を取り入れつつ視界を遮る効果もあり、公共トイレやオフィスの壁面に使われます。

ガラスブロックの使いどころ

  • 耐熱や防音をしたい。
  • 独特の雰囲気を出したい。

光の七変化を捉える : プリズムガラス

プリズムガラスは、40~50mmの厚さで製造されます。板ガラスよりもブロックガラスに近いため、ガラス成形品に分類されます。 壁材や間仕切り、トップライトなどに使用。床材として使われることもあります。

プリズムガラスの使いどころ

  • 光の色が見える空間を演出したい。

【ガラス繊維】集めて束ねて建材に変身

ガラス繊維

ガラス繊維は、ガラスを糸状に細く加工したもの。比較的短い繊維を使う「グラスウール」と、長い繊維を使う「グラスファイバー」に分けられます。

しなやかに吸収 : グラスウール (ガラス短繊維)

グラスウール

グラスウールは、ガラス繊維を交錯させて布状にした製品です。断熱材や吸音材として使用されます。

▼グラスウールについては、こちらの記事を参考にしてください。

グラスウールの使いどころ

  • 壁や天井に断熱・吸音の役割を与えたい。

FRPの「骨」になる : グラスファイバー (ガラス長繊維)

グラスファイバー
出典元 : 省エネ・温暖化防止・リサイクルに貢献するグラスウール断熱材 硝子繊維協会
出典日 : 2017年11月16日

グラスファイバーは、糸状に長く伸びたガラス繊維。FRP (ガラス繊維強化プラスチック)の原料になります。

▼FRPを使った製品については、こちらの記事をご覧ください。

グラスファイバーの使いどころ

  • FRPグレーチングの材料として。

まとめ : 状況やニーズに合わせてガラスを選ぼう!

ガラス製品の用途

ここまで様々なガラス製品をご紹介しました。上の図は、用途別に製品を分けたものです。もちろん図の用途以外に使えないということではありません。状況やアイデアによって、ガラスは色々な使い方ができます。

ガラスを注文するときは、各々に目的があると思います。「丈夫なガラスが欲しい」「デザインを楽しみたい」「断熱して部屋を快適にしたい」等々。そうした目的に合ったガラスは何か、選んでいくのは楽しいですよ。

マテリアルジャーニーでは、今後も色々な情報や知識をお伝えしていきます。第5回は日本における窓ガラス産業の生い立ちをご紹介。お楽しみに!

参考一覧

  • 嶋津孝之ほか『建築材料 第3版』森北出版株式会社、1994年
  • 加藤武彦ほか『わかる建築学6 建築材料』株式会社学芸出版社、2009年
  • 野口貴文ほか『ベーシック建築材料』株式会社彰国社、2010年
  • ガラス板のオーダーメイド販売 | オーダーガラス板.COM
    https://www.order-glass.com/
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