【GLASS : #05】窓ガラスの原点を尋ねて~国内ガラスの今と昔~
こんにちは。建材ダイジェスト編集部です。様々な建材を深く追求していくシリーズ「マテリアルジャーニー」。第4回では様々なガラス製品をご紹介しました。今回はガラスが日本の建築に使われた歴史と、現代のガラス建築に使われるガラスについてお伝えします。
ご自宅の窓ガラスが、いつ頃から作られ始めたのかを知ることで、普段の暮らしに新しい視点が生まれるかもしれませんよ。さっそく見ていきましょう!
日本のガラス建築は明治時代から
建材としてのガラスは、西洋ではローマ時代である4世紀から使われていました。しかし日本で使われるようになったのは幕末以降。それも明治時代まではごく限られた人や施設でしか使われませんでした。
明治42 (1909) 年、旭硝子が国内初となる板ガラスの量産を開始。ほとんど輸入に頼っていた日本のガラス産業を牽引していくことになります。当時は手吹円筒法 (シリンダー法) により製造していました。
大正7 (1918) 年には日米板ガラス株式会社 (現・日本板硝子株式会社)が設立。大正9年から生産を開始しました。その後、大正から昭和初期にかけて生産量が増加。住宅に窓ガラスが普及していきます。昭和12 (1937) 年には、ほとんどの板ガラス種類における国内需要を充足できるようになりました。
しかし戦争が始まると、ガラスは航空機や艦船などの軍需目的でのみ生産されるようになります。そのため一般住宅では、ガラス窓をいっそう大事に扱う必要がありました。
戦争が終わると、板ガラス操業が順次再開。終戦直後は全国で住宅が不足し、学校などの窓ガラスも割れた状態でした。建材としてのガラス生産は、社会的に重要な役目を担っていたのです。
戦後、ガラスの生産量は住宅の増加と共に急増。昭和38 (1963) にはセントラル硝子株式会社が発足し、ガラス産業は活況を呈していきます。
更に同年7月、建築基準法改正により建築物の高さの制限が緩和されました。これにより高層ビルが発達し、それに伴ってガラスの大型化や多様化が求められるようになります (ガラスの種類については後述します)。
そして昭和40 (1965) 年に日本板硝子が、翌年には旭硝子が、フロート法による生産を開始しました。フロート法は工業用ガラス生産の決定版とも言える方法で、以降、日本のガラス産業は飛躍的に発展していきます。
その後、1980年代からガラス建築が急増。当時の日本はバブル期で、とにかく新しいものを何でも作ろうという熱気がありました。そうした雰囲気が渦巻く時代において、全面ガラス張りの建築は近未来を想起させるアイコンとなったのでしょう。
現代のガラス建築
現代建築において、ガラスは様々な使われ方をしています。その象徴と言えるものが、ガラス建築でしょう。壁面を全てガラスにするこの建築方法は、デザイン性のみならず採光などの機能的効果も考えられています。
視界が開けているので、高層ビルの上階では遠くまで広がる景色を眺望できます。透明なことから、社屋に使えばクリーンな会社というイメージを持たせることも可能。
近年はビルだけではなく、一般住宅でもガラスの面積が増えている傾向を感じます。「ザ・窓」でもご紹介しましたが、大開口窓や天窓など、様々な場所に窓が設置されることに伴い、ガラスを使用する機会も増えています。
▼多様化する窓の種類については、下の記事を参照してください。
このように現代建築で益々重要になるガラス。しかしガラス建築には弱点もあります。
ガラス建築の課題 : 日射と断熱性
ご存知の通りガラスは光を通し、他の建材に比べて熱が伝わりやすい物質です。そのため夏の直射日光が厳しくなり、冬は結露が発生するなどの課題があります。住宅の結露なら掃除もできるでしょうが、全面ガラスの高層ビルでは非常に難しいでしょう。夏は暑く冬は寒くなり、冷暖房費が嵩むことになります。
一般住宅にも同じことが言えます。例えば天窓は採光量が増える長所がありますが、夏は強い日差しが入るので家の中が暑くなります。
こうした課題に対応するため、ガラス建築では様々なガラス製品が使われています。それらをご紹介していきましょう!
ガラス建築で使われるガラス
ペアガラス、Low-Eガラスで断熱はおまかせ
ぺアガラスは断熱性に優れたガラスですが、そこに「Low-Eガラス」を使うことによって更に効果が高まります。Low-Eガラスとは”Low Emissivity Glass”(低放射率ガラス) のこと。
ペアガラスの中空層に接する面に、銀 (Ag) をベースとした金属膜をコーティングすることで、高い断熱性と遮熱効果を発揮します。
▼ペアガラス、Low-Eペアガラスについての詳しい情報は、こちらをご覧ください。
ペアガラス(ペヤガラス)断熱複層ガラスの加工・販売はオーダーガラス板.COM 結露防止&断熱ならペアガラス
もちろん、Low-Eペアガラスはビルだけではなく一般住宅にも有効です。「夏、室内に入る日差しを和らげたい」「冬の暖房熱を外に逃がしたくない」といったニーズを叶えることができますよ。
熱線反射ガラス、熱線吸収ガラスで日差しをカット
「熱線反射ガラス」はガラス表面に金属膜をコーティングすることで、太陽光の反射率を高めた製品です。反射率が高いので、物がよく映ります。昼間、街路樹が鮮やかに映り込んだガラス建築のビルは、洗練された独特の雰囲気がありますね。
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「熱線吸収ガラス」は、ガラスそのものを着色して日射吸収率を高めた製品。多くの太陽光を吸収することで室内への放熱を抑えられます。照りつける夏の太陽が部屋の中を暑くすることを防いでくれるのです。
▼熱線吸収ガラスについての詳しい情報は、こちらをご覧ください。
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セラミックプリントガラス
「セラミックプリントガラス」は、ガラスの室内側面にセラミックペーストをスクリーン印刷した製品。遮蔽効果があります。様々な色や模様が表現できるので、デザインガラスとしても使えます。
▼セラミックプリントガラスについての詳しい情報は、こちらをご覧ください。
セラミックプリントガラス (印刷ガラス・色ガラス・柄ガラス)の加工・販売はオーダーガラス板.COM
この他にも様々な種類のガラスがあり、細かなニーズに対応しています。詳しくは下の記事をご覧ください。
まとめ : ガラスは進化し続けている。
ここまで国内における板ガラスの歴史と、現在のガラス建築に使われる製品について見てきました。現代において、ガラスは家を構成する重要な建材となっています。その役割は今後、より大きくなっていくでしょう。
施主のニーズが多様化する昨今、ガラス製品は実に様々な種類があり、これからも新しい技術が次々と開発されるものと思われます。
どのようなガラスが、どこに、どのような目的で使われるのか。今後も折に触れてご紹介していきます。第6回は板ガラスの芸術、ステンドグラスについて特集します。
国産板ガラスの歴史まとめ
- 日本で板ガラスの工業生産が始まったのは明治時代。その後大正、昭和と発展していった。
- 現代では壁が全面ガラス張りの「ガラス建築」が増えている。その建築に合わせたガラス製品も登場した。
参考一覧
- 社団法人 日本建築学会『ガラスの建築学 光と熱と快適環境の知識』株式会社学芸出版社、2004年
- 森哲「板ガラス製造技術発展の系統化調査」『国立化科学博物館 技術の系統化調査報告 第9集』独立行政法人 国立科学博物館、2007年
http://sts.kahaku.go.jp/diversity/document/system/pdf/035.pdf - AGC公式サイト
http://www.agc.com/company/history/evolution.html#tab-target - NSG公式サイト
http://www.nsg.co.jp/ja-jp/about-nsg/who-we-are/our-history - セントラル硝子公式サイト
https://www.cgco.co.jp/company/history.html - ガラス板のオーダーメイド販売 | オーダーガラス板.COM
https://www.order-glass.com/
(参考サイトの最終閲覧日は、いずれも2017年12月26日)