【GLASS : #07】元気になりたい人必見!採光と開放感にこだわるガラス選び<前編>
これまでの流れ
- 【GLASS : #01】ガラス作りの歴史 ~8つの製造法~
- 【GLASS : #02】ガラスの正体とは?~成分に応じた分類~
- 【GLASS : #03】ふしぎ物質!ガラスのユニークな性質を調べてみました。
- 【GLASS : #04】こんなに選べるガラス製品。あなたが求めるガラスはどれ?
- 【GLASS : #05】窓ガラスの原点を尋ねて~国内ガラスの今と昔~
- 【GLASS : #06】神々しい美しさ。ステンドグラスが知りたい!欲しい!
- 【GLASS : #07】元気になりたい人必見!採光と開放感にこだわるガラス選び<前編>←今回の記事
こんにちは。花粉症が無ければ春の日差しが待ち遠しい、Mr.Tボーンです。「マテリアルジャーニー」ガラス編では、ガラスに関するあんなコトやこんなコトをご紹介しています。
私自身、記事を書く中で気付かされるのは「世の中には本当にたくさんのガラス製品があるなー」ということです。後ほど詳しく述べますが、現代の住宅には事実上、必ずガラスが使われています。人が生活を営む以上、ずっと付き合っていく建材なのです。
「生活」は、住む人や場所、その他色々な条件によって千差万別。ですから、それぞれの状況に適したガラス製品が開発されたことは必然なのでしょう。今回はガラスの最も基本的な役割である「採光」と「景観」という観点からお伝えします。
人間のより良い暮らしにはガラスが不可欠
「快適な生活がしたい」という欲求は、万人に共通するものでしょう。その欲求を満たすためには窓ガラスの存在が欠かせません。「当たり前じゃないか」と思われるかもしれませんが、とても大事なことなのでご説明します。
採光の基準は法律で決められている
現代日本の住宅では、採光のために窓を設置しなければなりません。
建築基準法第28条において「居室には採光のための窓その他の開口部を設け」なければいけないと定められています。また、窓の面積は「その居室の床面積に対して、住宅にあつては七分の一以上、その他の建築物にあつては五分の一から十分の一までの間において政令で定める割合以上としなければならない」とのこと。
ちなみにここで言う「政令」とは「建築基準法施行令」のこと。第19条に建物別の窓面積の基準が示されています。
五分の一以上 | 幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校又は幼保連携型認定こども園の教室と居室 |
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七分の一以上 | 病院又は診療所の病室と居室、寄宿舎の寝室又は下宿の宿泊室と居室 |
十分の一以上 | 上記学校以外の学校の教室と居室 |
これを見ると、小さい子供がいる施設ほど窓の面積を増やさなければいけないと分かります。人間の成長にはお天道様の光が必要ということですね。
「開放感」は人間の活力に関わる
ガラスには、採光と共にもう1つ重要な役割があります。それが「外界との繋がり」。外の景色が楽しめるということです。
旭硝子のカタログには、窓に関してアメリカの学校における調査が載っていました。それによると、窓が大きい教室の学生は、窓が小さい教室の学生よりも数学、読解力が早く身に付くといいます。また病院では、自然光が入りやすい病室は入院期間が短いという調査結果もあります。
旭硝子のアンケートでは、窓の心理的な効果について「外とのつながり」や「開放感」が得られるという回答が多く寄せられています。
(参考 : 「旭硝子 板ガラス建材総合カタログ 技術資料編」3-8-4頁)
景観は、ただ目を楽しませるだけではなく、私たちのやる気や生産活動に深く関わっていることが分かりますね。
「西洋のガラス」と「日本の障子」
建材としてのガラスは、長らく西洋で使われてきました。ガラス編第1回でも触れましたが、板ガラスは1世紀のポンペイで使用されています。天窓に使われていたことから、採光という目的がよく分かります。
一方の日本では、住宅にガラスが使われ始めたのは明治以降。それ以前に西洋のガラスと同等の役割を果たしていたもの、それが障子です。
障子は日光を柔らかく拡散し、室内を明るく落ち着いた雰囲気にします。その微妙な調光機能は、居住空間に対する日本人独特の感性を育てたのではないでしょうか。
そして近代化の中で、日本人は海外からガラス建築を取り入れます。明治後半には国産板ガラスの製造が始まり、今日まで発展してきています。
▼日本におけるガラス製造の歴史については、ガラス編第5回で扱っています。
ちなみに建築業界では、サッシや窓ガラスのことを「障子」と呼ぶことがあります。これも障子を主要な建具として使っていた時代の名残かもしれませんね。
事例紹介 : 景観と採光の効果を高めるガラス製品
事例1 : 障子とガラスの組み合わせ
出典元 : OOKABE GLASS
最終閲覧日 : 2018年2月23日
現代日本ではガラスが普及し、窓といえばガラス窓を指すことが一般的になりました。今や障子は窓ではなく、室内の間仕切りとして使われることがほとんどでしょう。しかしガラスと障子はそれぞれ別々に使われるだけではなく、1つの建具として融合することもあります。
それが「雪見障子」。これは障子の下部にガラスを嵌めて、外の景色を見られるようにしたものです。和魂洋才、外国の文化を取り入れつつも自分たちの技術を生かす、日本人の知恵が表れた建材ですね。
築50年の我が家にもありますが、座って読書するとき、ちょっとだけ外の景色が見えます。本に集中しながらも外界が目に入るので、気分が疲れることなく過ごせます。
上の事例では「昭和レトロガラス」を使用。揺らぎが独特の趣をかもし出していますね。
事例1で使用されたガラス
事例2 : デザインガラスで彩る窓
出典元 : OOKABE GLASS
最終閲覧日 : 2018年2月22日
現代のガラス窓は、日光をそのまま取り入れるだけではありません。より美しく、より多彩な表現が可能です。上の施工事例では複数のデザインガラスを使用。すりガラスに似た半透明のガラスは、日差しをぼんやりと散乱。温和な空間を作ります。カラーガラスがアクセントになり、目を楽しませてくれますね。
事例2で使用されたガラス
このように種々様々なガラスを使うことで、採光を最高に愛好することができます。他にも光を効果的に使えるガラスはたくさんありますので、次回はそれら製品をご紹介しましょう!