家の木材というと、杉・ひのきだけじゃないの…?
家の木材というと杉・ひのきのどちらかを思い浮かべませんか?
私もそうだったんですが、先日取材した「木のある暮らし展2017」で、実は「松」も昔から構造材として使われていることを知りました。
なかでも島根県石見地方にある中国山地は松の2大産地のひとつとなっているそうです(もう一つは東北)。
今回国内でも希少となった松を取り扱う竹下木材さんにいろいろ教えてもらったので、伝えたいと思います。
竹下木材有限会社 | ~中国山地から選りすぐりの木を~
http://takeshitamokuzai.jp/
そもそも「松」ってどんな木材なの?
松にもいくつか種類があり、なかでも国産の松を「地松(じまつ)」といいます。地松はさらに「黒松」「赤松」に分類されることがわかりました(前回紹介したカラマツは地松には分類されておらず「カラマツ」です)。松の英語名はPine(パイン)で、「パイン材」というと業界では「北欧産の松」を示すことが多いそうです。
松の特長として「硬さ」と「色艶」があり、特にその硬さからやわらかい木材だとたわみやすい梁(はり)として古くから重宝されています。そのため文化財のような建造物にも好まれて使われており、法隆寺、松江城、彦根城、東大寺といった有名な建物の梁にも松が使われています(松の長所・短所の詳細については記事末尾に後述)。
施工事例
実際に松がどんな風に使われているのか、さっそく施工事例をみていきましょう。
①ゲストハウス
格調高い、なんとも立派な建物ですね~。なんとこちら「世界遺産 石見銀山の中で滞在できるゲストハウス」です。ゆずりはというお宿。ゴールデンウイークは予約でいっぱいでした。
中をみるとこんな感じ。吹き抜け空間が広がっており、写真上に梁丸太が見えますよね。そこに地松材が使われています。ゆるやかな曲線や杢(もく)が映えますよね。
②世界一小さなオペラハウス
旧郵便局を改装した、収容人数100名の世界一小さなオペラハウス「大森座」という建物があります。こちらも石見銀山内にあり、梁材や階段材に地松が使われています。ステージから観客席をみている写真です。
外からみた夕暮れ時はこんな感じ。これまで隠れていた空間が一気に姿をあわらす、そんな印象を受けます。
③一般住宅
一般住宅の梁にも使われており、こちらは手刻みの職人技が施された木造住宅。ちなみに壁は土壁(竹小舞)で、柱はひのきです。
階段にも使われています。木目がきれいなので、傷つけないようそっとのぼりたくなりますね。
④お寺
こちらは島根県松江市の正林寺。屋根材・横架材(おうかざい)に地松が使われています。
こちらのググッと海老のように曲がった梁は「海老虹梁(えびこうりょう)」と呼ばれ、高低さのある所に用いられる梁です。大きい直径の丸太からしか取れないため、大変貴重。もとの松の姿がぼんやりと浮かんできます。
地松の製品ラインナップには何があるの?
施工事例から松の使われ方について、知ることができました。では実際、建材製品として地松の商品ラインナップにはどんなものがあるのでしょうか?竹下木材の場合、つぎの7種類があります。
松にもいろんな使われた方&建材製品があることがわかりました。こうやって分解できるようになると、「梁は松」「柱はひのき」「床は杉」など適材適所で使い分けたくなりますね~。
価格は?
価格は次のようになっています。
- 地松構造材(4m 120×210 乾燥材プレーナー加工品)…設計価格13,200円
- 地松フローリング(上小無地節)…設計価格10,000円/m2
まとめ
今回の松、実は松くい虫の影響もあり今では希少な木材となっています。国内で採れる場所は中国山地と東北の2箇所のみ。現在約20年級の松が育ちつつあるものの、実際に製品として求められる50~60年級は育っていません。そういった中、社寺仏閣・文化財といった建造物の補修時期も重なり、松を安定供給できる仕組み・技術・職人の継承が課題となっています。
そんななか、創業52年の竹下木材では約10年前から希少になってしまった地松の安定供給に力を入れ始め、一般の住宅にくわえ社寺仏閣や重要文化財へ納材しています。また大工の技も継承できるよう、プレカットできない継ぎ手部分の”手仕事”も松に刻み続けています。
でも決してハードルが高い木材にならないよう、フローリング材として手軽に松を楽しめる製品も発売しています。
素材の裏にあるストーリーに目を向けることも、建材選びのヒントになるのかもしれませんね。
ぜひ松を使ってみてはいかがでしょうか。
参考 : 松の長所と短所
松の長所
- 粘りがあり、強度や耐久性に優れている。
- 経年変化と共に、素晴らしい色艶を出します。
- 成長が遅く、年輪の割合に肥大成長が小さく目のこんだ材ができるので、杢が強く浮いてくる。よって、銘木としても評価が高い。
- 赤身材は水に強く、かつては水道管に松の赤身を使用していた地域もある。
- 杭木として使用しても非常に強く、東京丸の内の区画造成にも山陰の地松が使われた。
- 暑さ寒さに耐え、乾燥地や山の急斜面、風当りが強い場所でも育つ。
- 節操や長寿を象徴する木として尊ばれている。
- 天から神々が降り給うのを“まつ”という意味から松という名前が付いたという様に、古くから神聖なものとされ、現在では松竹梅、鶴亀と共にめでたいもの(縁起物)とされている。
松の短所
- 乾燥時に材の割れやねじれが発生しやすい。
- 芯持材は表面割れが発生しやすい。(強度に影響はない)
- 伐採時期ではない時期の材は青変菌が発生しやすい。
- 生産数が少なく伐採時期も限られているため、全国的に流通量が少ない。
引用元 : 地松の長所と短所、強度 | 竹下木材有限会社
引用日 : 2017年4月13日
この建材のポイント
オススメなのは? | 美しい木目、色艶を楽しみながら頑丈な家にしたい方 |
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一番の強みは? | 杉・ひのきよりも実は硬い |
施工の強みは? | 大工としての実力を思う存分発揮できる |