著名建築家が使用した100%自然素材の内装材「タナクリーム」と本漆喰を比較
CLASS1 ARCHITECT Vol.11で特集した、MARU。architecture設計の「土佐市複合文化施設 つなーで」。そこで塗り壁材として採用されたのが、生石灰クリームの「タナクリーム」です。
「タナクリーム」は、あたたかみのある素材感を出せる塗り壁材。施工時には手跡やムラを残すことができ、光が当たればやわらかく反射します。
「システマチックになりがちな公共空間に、人肌に近い素材を使いたかった」というMARU。architectureの設計のねらいに最適な建材でした。
「タナクリーム」を開発した田中石灰工業株式会社への取材では、「タナクリームは漆喰施工をより手軽に行えるように商品化したもの」と語られていましたが、機能性や質感において、一般的な漆喰と異なる部分はあるのでしょうか。また、どのような場面で「タナクリーム」の使用がおすすめなのでしょうか。
田中石灰工業株式会社への取材をもとに、タナクリームと一般的な漆喰(本漆喰)の違いについて紹介していきます。
タナクリームとは?
「タナクリーム」は、漆喰の原料となる生石灰(きせっかい)をそのままペースト状にしたもの。漆喰と同じくコテを使って施工します。
伝統的な漆喰の製法とは異なりますが、施工後の仕上がりは漆喰そのもの。田中石灰工業のwebサイトでは、タナクリームを「漆喰であると言って問題ない」とされています。
タナクリームと漆喰の共通点
タナクリームと漆喰の比較をする前に、共通点を見てみます。
タナクリームは漆喰と同じく自然素材でできた建材で、漆喰がもつVOC(揮発性有機化合物)吸着性や抗菌性を備えています。
- 100%天然素材。化学物質を含まず、環境にやさしい。
- 悪臭やホルムアルデヒドを吸着・分解する。
- 表面がアルカリ性を保ち、カビ・ダニ防止作用や抗菌作用を発揮する。
- 細かな孔が室内の湿度を調節。冬場の結露を防止する。
- さまざまなパターンを付けられる。
タナクリームと漆喰の3つの違い
次に、タナクリームと一般的な漆喰の違いを見てみます。
1:専門知識なしで施工できる
粒子が細かいタナクリームは、一般的な漆喰よりも粘度が高くなります。そのため下地への付着力が高くなり、漆喰のように下塗り・中塗り・上塗りと、重ね塗りをする必要がありません。
職人の施工技術に左右されないためDIYでも施工しやすくなっています。キズができても、自分で塗り重ねて補修できます。
職人による施工・メンテナンスが必要ないため、建物全体のコストを抑えることにもつながります。
2:薄く塗ることが求められる
漆喰などの左官材料は、壁に塗った後、水気が蒸発し、乾燥・ひび割れが表れやすくなります。
一般的な漆喰は、複数回重ね塗って仕上げたり、コテで圧力をかけて押さえ込むことで収縮・ひび割れを小さくすることができます。一方でタナクリームは、そのひび割れを予防するためにも「できるだけ薄く塗る」ことが重要になります。
薄塗りに注意する必要がありますが、その分、短工期で施工できるのはメリットになります。
3:色ムラが出やすい
上記の「薄塗り」の影響として、着色して仕上げる場合に色が均一になりにくいのもタナクリームの特徴です。
消石灰が主成分のタナクリームや漆喰は、pHは強アルカリ性を示します。強アルカリ性の環境下では、コテ圧の微妙な違いや乾燥速度の違いが色の濃淡につながります。
一般的な漆喰では、重ね塗る過程で乾燥具合をコントロールすることが可能ですが、タナクリームは薄塗りがゆえに乾燥速度の違いを引き起こしやすくなり、着色時は色むらにつながりやすくなっています。
壁の色を均一にせず、あえて自然のムラを出して楽しみたい場合にはタナクリームがおすすめです。
タナクリームがおすすめの場面とは
漆喰との共通点と相違点を備えるタナクリームは、どのような場面での使用に合っているのでしょうか。
この記事での比較を参考にすると、タナクリームにおすすめの使用場面は次のように整理できます。
- 自分の手でオリジナルの漆喰壁を施工したい方
- コストを抑えて、短納期で壁を仕上げたい方
- 壁にムラを出して仕上げたい方
- 内装用に漆喰を使いたい方
CLASS1 ARCHITECT Vol.11では、タナクリームを建築家のレビュー付きで紹介しています。
MARU。architecture がタナクリームを採用した理由や、田中石灰工業株式会社による開発秘話など、ここでしか聞けない話を無料公開。壁材に漆喰の施工をお考えの方は、ぜひ一度ご覧ください。