茅葺きをもっと身近に!京都の職人技「茅の庇-ひさし-」
今回ご紹介する建材は、2016年2月に販売開始した「茅の庇-ひさし-」。古来から屋根に使われてきた茅を庇に用いるアイデアは一体どのようなものなのでしょうか。2016年6月8日(水)~6月10日(金)開催のKENTEN 2016に出展されていた山城萱葺株式会社さん(京都府城陽市)を取材しました。
日本の原風景を再現する職人技「茅葺き(かやぶき)」
今ではなかなか目にしなくなった茅葺き屋根。かつては名曲「ふるさと」に出てくるような日本の里山でよく見ることができました。
山城萱葺株式会社さんは京都を中心に全国で茅葺き屋根工事を行う職人集団。代々から茅葺き屋根の材料である葦(よし)を扱う仕事をしています。その職人技でこれまで多くの民家や文化財の茅葺き屋根を造ってきました。
白川郷の合掌造りなどで知られる茅葺き屋根ですが、実は海外でも古くから造られてきました。オランダやイギリス、ドイツなどヨーロッパの田舎では今でも新築の茅葺き屋根を見ることができます。
茅葺き屋根を文化財としてだけではなく、生きた形で残したい
新建材の開発と住環境の変化により、今では茅葺き屋根の民家はめっきり減ってしまいました。そうした中で「日本の素晴らしい伝統である茅葺き屋根を文化財としてだけではなく、住宅・街の中で生きた形で残したい」と開発したのが「茅の庇-ひさし-」です。
大きな切妻の屋根を葺くことは難しくても、小さな庇ならば茅葺きを手軽に取り入れられます。この茅の庇はこれまで培ったノウハウを生かし、現代の家に和風のしつらえを楽しめるように考え出されました。
そんな当製品の強みは次の2点です。
茅の庇-ひさし-の強み
- 庇の長さと厚みをオーダーメイドで自由にカスタマイズ可能
- アジア風からイギリス風といった純和風以外のアレンジも可能
1. 庇の長さと厚みをオーダーメイドで自由にカスタマイズ可能
実際に茅の庇をどのように使うことができるのか、山城萱葺株式会社さんでは次のような提案をしています。
ケース1 | 店内のカウンター席の上部に取り付ける |
---|---|
ケース2 | 玄関口や門の上に日除けとして取り付ける |
ポイントは好みの大きさに庇の横幅や奥行をカスタマイズできること。「もっとボリュームを足して」「もっと大きく」など、自由な発想で茅葺きを自己流に楽しめる点が強みです。
ケース1 : 店内のカウンター席の上部に取り付ける
板前さんがいる料亭などの席上部に設置することで、ゆったりと落ち着ける空間を演出できます。
ケース2 : 玄関入口の日除けとして取り付ける
お店や住宅の玄関入口に設置することで日除けとしてだけでなく日本らしさも演出できます。行き交う人々の目を引き付けることでしょう。
2. アジア風からイギリス風といった純和風以外のアレンジも可能
山城萱葺株式会社さんが提案しているのは単なる庇ではありません。ベースのシンプルな茅葺きに装飾をすることで、さらに幅のあるデザインが可能になります。例えば次のようなバリエーション。
ケース1 | 緑の多いイギリス風 |
---|---|
ケース2 | 風通しの良いアジア風 |
ケース1 : 緑の多いイギリス風
上にグリーンをプラスすればイギリスのカントリーヤードを思わせる茅葺きになります。
ケース2 : 風通しの良いアジア風
ヤシの葉を庇の上に加えるとアジアンテイストになりエスニック感が出ますね。
茅という1つの素材からオリジナリティを演出できる点が面白いですね。
気になる価格は1mあたり約12~20万円程度、庇の形状やメーター単位で価格が決まるとのことです。
規制が厳しい茅葺き屋根!それでも茅葺きを取り入れたい方にピッタリ
茅葺き屋根は50年以上もちますが、約10年に一度の周期で傷んだ部分を取り換える必要があります。25年目あたりでは一度本格的な修復が必要で、その額は面積に応じ1,000万円以上かかることも。建築基準法にも関係するため、維持負担はもちろんのこと防火を踏まえた設置規制も厳しいのが現状です。
建築基準法 : 第二十二条
特定行政庁が防火地域及び準防火地域以外の市街地について指定する区域内にある建築物の屋根の構造は、通常の火災を想定した火の粉による建築物の火災の発生を防止するために屋根に必要とされる性能に関して建築物の構造及び用途の区分に応じて政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。
ただし、茶室、あずまやその他これらに類する建築物又は延べ面積が十平方 メートル以内の物置、納屋その他これらに類する建築物の屋根の延焼のおそれのある部分以外の部分については、この限りでない。
- 引用元 : 建築基準法
- 引用日 : 2016年6月20日(月)
ところが庇となるとこの規制の適用外になります。「屋根は無理でも茅葺きが醸し出す日本の和と落ち着きを取り入れたい」そんなニーズに庇という小スペースに表現できる「茅の庇」は、非常に魅力的な建材ではないでしょうか。
この建材のポイント
オススメなのは? | 古来の茅葺きに興味があったが費用や施工規模で諦めていた、一般住宅の建主、店舗を飾りたい店主 |
---|---|
一番の強みは? | 茅葺屋根職人が作った本物の茅葺き |
施工の強みは? | 庇の長さと厚みをオーダーメイドで調整できる |