【調湿】そもそも部屋の湿度を調整するメリットとは?
建材カタログでいろんな製品をみています。
よくみかける建材の特長に「調湿」というものがあります。
でも「調湿」と聞いても、正直ピンとこないことありませんか?
私もこの業界に入るまで、調湿という言葉すら知りませんでした。
そもそも調湿って何なのでしょうか?
調湿できると一体何がいいのでしょうか?
今回はそんな「調湿」するメリットについて掘り下げていきます。
1. そもそも調湿とは?
広辞苑で調べてみると、次のように定義されています。
ちょう‐しつ【調湿】‥ 空気中の湿度を調整すること。
引用元 : 広辞苑 第6版
引用日 : 2016年12月14日
「湿度の調整=調湿」ということがわかりました。
ということは加湿器で湿度を上げることも調湿、除湿器で湿度を下げることも調湿なんですね。
2. 調湿をする目的は?
では湿度を調整する目的は何でしょうか?
どういう時に気になるのでしょうか
ためしに「部屋 湿度」と検索する量を調べてみると11~12月に多いことがわかります。
まわりの人に聞いてみたところ、「冬は暖房つけすぎると部屋が乾燥するから、肌が荒れたり、のど痛くなったりするんですよね」との声がありました。
エアコンつけるのと引き換えに、部屋は湿度を失うことがわかります。
となると、部屋の理想の湿度を知っておいた方がよさそうです。
そもそも部屋の湿度は何%が理想なのでしょうか?
3. お部屋の理想の湿度は?
①湿度60%以上だと、カビ・ダニが増殖する
たとえば文部科学省ではこんなカビ対策マニュアルがあります。
カビの生育環境
通常では対象とする物質のAwを0.6以下に保持するとカビは全く生育できない。
これを維持するために環境の相対湿度を温度変化に拘わらず常に60パーセント以下に保つことが必要である。引用元 : カビ対策マニュアル 基礎編-文部科学省
引用日 : 2016年12月15日
【ポイント】 部屋の湿度が60%を超えたら、あなたのそばでカビがすくすく育っている
ではダニについてはどうでしょうか。
私たちの身の回りにはダニが生息していますが、ダニは餌・潜る場所・温湿度の条件がそろうと繁殖します。
- 餌
カビ、人の垢、食べ物などを餌としています。でんぷんやタンパク質、旨み成分等を含むお好み焼き粉やホットケーキミックスはダニの格好の餌となります。- 潜る場所
家庭内では畳やじゅうたんなどに多く生息すると言われているように、狭くて潜ることができる場所を好みます。こうした場所は卵を産むのに適していてダニが住みやすくなっています。- 温度・湿度
温度は25~30℃、湿度は60~80%を好みます。適度な温度と湿度のある台所は、ダニが発生しやすい環境となっています。引用元 : 開封後の粉製品は早めの消費を!|「食品衛生の窓」東京都福祉保健局
引用日 : 2016年12月15日
【ポイント】 ダニは湿度60%~80%の部屋では、飛び跳ねて喜んでいる
②空気が乾燥するとインフルエンザにかかりやすくなる
インフルエンザと湿度も関係があります。
厚生労働省によると、
4) 適度な湿度の保持
空気が乾燥すると、気道粘膜の防御機能が低下し、インフルエンザにかかりやすくなります。特に乾燥しやすい室内では、加湿器などを使って適切な湿度(50~60%)を保つことも効果的です。
引用元 : インフルエンザQ&A|厚生労働省
引用日 : 2016年12月15日
【ポイント】 湿度50~60%に保ってインフルエンザにかかったら、胸を張って言い訳できるかも
③部屋に飾っている絵が劣化する
家に飾る物にはどんな影響があるのでしょう。
東京文化財研究所によると、素材によって適した湿度があることがわかります。
材質に応じた湿度の条件
◇高湿度◇
100% 出土遺物(保存処置前のもの) ※防黴処置が必要◇中湿度◇
55-65% 紙・木・染織品・漆
50-65% 象牙・皮・羊皮紙・自然史関係の資料
50-55% 油絵
45-55% 化石◇低湿度◇
45%以下 金属・石・陶磁器
※塩分を含んだ物は先に脱塩処置が必要
15~40% 銀・ゼラチンマイクロフィルム(JIS Z 6009)引用元 : 第24回保存フォーラム 講演「書庫・収蔵庫の温度湿度管理」 配布資料
引用日 : 2016年12月15日
紙や木は湿度55~65%、油絵なら50~55%など、保存に適した範囲があるんですね!
【ポイント】 鑑定団に応募するなら知っておきたい保存法がある!
④建物の木材にも影響する
湿度は建物にも影響を与え、最近では「湿害」と呼ばれています。
- 建築に使う木材の乾燥度は規定されており、全く水分を含まない木材は「絶乾状態」、空気中の湿度とのバランスが取れている木材は「気乾状態」、水分を多く含むものは「湿潤状態」と呼ばれており、建築材料学的には、「湿潤状態」になった建材は使わず、「気乾状態」以下のものを使うことになっています。
- しかし、建築物の木材が湿度を含んでしまうと、木材の中に入り込んだ木材腐朽菌が繁殖し、結果的に木材強度が低下することがあります。建物の土台や柱などに使われている木材の強度低下が起これば、耐震強度の低下につながります。阪神大震災のときに倒壊した住宅が、実はそういう住宅が多かったという調査報告もあります。
- 梅雨時期のように湿度が高くなる時期には、居住者のためだけでなく住宅のためにも、除湿機などを使用して室内の湿度が高くなり過ぎないようにすることが重要です。
引用元 : 梅雨の困りごとと解決法|空気の困りごとラボ|ダイキン工業株式会社
引用日 : 2016年12月15日
また「建築物環境衛生管理基準」で部屋の湿度を「40%以上70%以下」の維持管理につとめましょうとあります。
空気調和設備を設けている場合は、居室において、下表の基準におおむね適合するように、厚生労働大臣が定める「空気調和設備等の維持管理及び清掃等に係る技術上の基準」に従い、空気調和設備の維持管理に努めなくてはなりません。
オ 相対湿度 40%以上70%以下 引用元 : 建築物環境衛生管理基準について|厚生労働省
引用日 : 2016年12月15日
【ポイント】 湿度が高くなりすぎると、家の木材が吸って木材腐朽菌が増えちゃうことも
これらをまとめると、次のようになります。
- カビ対策…湿度60%以下であること
- ダニ対策…湿度60%以下、80%以上であること
- インフルエンザ対策…湿度50-60%であること
- 美術品の対策…これは素材によってさまざま
- 建物の木材対策…高すぎると腐る菌が繁殖する(明確な数値はでていない)
人・物・建物にとって、それぞれ理想の湿度は違うことがわかりました。
家に住む人にとっての部屋の理想の湿度は50~60%といえます。
ではどのようにして50~60%に調湿できるのでしょうか?
4. 調湿できる方法は?
①湿度を上げる方法 (加湿)
まず湿度をあげるには次のような方法があります。
- 加湿器をつかう
- お湯を沸かす(夕食に鍋をするのも有効)
- ぬれタオルを置く、洗濯物を室内に干す
- 観葉植物を置く
- カーテンに霧吹きで水を掛ける。
② 湿度を下げる方法 (除湿)
次に湿度を下げるには次のような方法があります。
- 除湿器
- 炭を置く、新聞を置く
- 窓を開ける(換気する)
- エアコンのドライ機能
③ 調湿する建材をつかう(加湿・除湿)
ここで登場、調湿建材!
建材が自動で調湿するなんてこと、建築業界でない人はほとんど知りません。
たとえば冒頭でお伝えした珪藻土とか、
卵の殻からできたものとか、
無垢の木そのものとか、
たくさんあります。
加湿器や除湿機がこれだけ人気がでているのですから、このような建材による調湿法を第三の選択肢として知っておいてほしいと、私は思います。
私もこの業界に入るまで知りませんでした。知って新築・リフォームするのとそうでないのでは、満足度が変わりますから、いま知れていてよかったと思っています。
まとめ
「調湿」というメリットはなかなかわかりにくいかもしれません。
でもその意味をきちんと理解することで、実はわたしたちの健康や快適なくらしに密接に結びついていることがわかります。
くらしの問題を解決できる調湿建材の価値を、ぜひこの機会に知ってもらえれば幸いです。