暮らしと自然の境目をなくす建材とは。
大地の家
「日本建築には風化がなくなった」
その問いに正面から取り組んだ
建物はいつが形としてピークを迎えるのだろうか。人間や自然は時を重ねるごとに重みや風格を身に付けていくのに、人間が手掛けた建物という存在は、建てた瞬間がピークになることが多い。「本当は時間の経過とともに建物も成長していけるのではないか」。畑氏は、「建築で人が自然体でいられる空間を回復する」という志を、今回の施主からの問いかけで再燃することとなった。 「『大地の家』を設計するときに思い出したのが、村野藤吾さんが設計した教会でした。レンガの目地に銅板を挟んで、何十年か経ったときにレンガに緑青の錆が出るようにするという設計です。時間までも設計に加えるという手法に正面から取り組みました」。
経年による劣化ではなく、良い意味での風化が施されていく建物。そこには幼少期に自然の豊かな町で育った畑氏の経験が活きている。狂暴でもあり愛情もくれる自然とともに生きてきた感覚。そこにある家もまた、自然の力を借りて成長するもの。何層にも積み重なった人工の“大地”に、生態系が育っていくような家。この地域の生態系、風の通り道、太陽の回り道を調べ、「何十年か後の世界で完成する家」を設計した。
完成してから2年が経過し、この家はどこにいても自然を感じることのできる場所になった。「生態系が定着しつつあるのを感じました。ほっとした部分もありましたが、生態系に関しては予定していても裏切られることもあります。それもまた楽しみなのが今回の家だと思います」と畑氏は語った。
大地の家
所在地 / 大阪府池田市
設計 / 畑友洋建築設計事務所