【カーテン】
大西氏と百田氏がストックホルム在住のテキスタイルデザイナー、森山茜氏に依頼したのは「動物の毛皮のようなカーテン」だった。「toberu」のカーテンに共通しているのは、耐久性があり⼟に還る素材を使⽤していること。高さ5mの開口部を持つライブラリーでは⽇差しを和らげる綿100%のもの、坪庭の前では優しく⾵を受けタイルの色を映し出すシルク製のもの、そして個室に絵画のようにかけられた一枚布のカーテンはウール製のものなど、素材や染め方などさまざまな方法で直感的な心地よさが表現され、空間を彩っている。
「toberu」では「若いクリエイターを応援したい」と施主さんが考えてくださっていました。そこで思い浮かんだのが同世代で、同じ時期に京都で学んでいた森山さん。以前から彼女がつくる作品の素晴らしさも知っていて、いつか一緒に仕事ができればと思っていたのでお声がけしました。
建材開発秘話
建築全体からテキスタイルを具体化
テキスタイルの製作を依頼された時は、まずテキスタイルが使われる建築全体を理解することから始まります。建築の模型から空間全体を捉え、そこに自分のテキスタイルをどう呼応させられるか、俯瞰的に見て素材を考えています。公共建築の場合は使用できる素材に制限があることが多いのですが、今回は選択できる素材の自由度が高く、ぴったりの素材を選ぶことができました。
共有空間と個人空間で素材を使い分ける
ライブラリーに使用したのは、コットンオーガンジーという綿の薄い素材。細長い空間のライブラリーを広く見せるために、紗のような軽く透明な素材で、かつ直射日光に長時間当たっても劣化しないものを採用しました。反対に、個室のカーテンには分厚いウール素材を使用。プライバシーを守り、中にいるとほっとするような素材であるだけでなく、断熱・遮音など機能性にも優れています。
環境問題にデザイナーとしてできること
最近は「建築で使われる布を、よりサスティナブルなものにできないか」と考えるようになり、環境問題に対してテキスタイルからできることを探っています。「toberu」で使用したテキスタイルを「いつか土に還る素材」に絞ったのもそのためです。今後は、カーテンとしての役目が終わっても他の用途に活かせたり、リサイクルできたりする製品づくりなどにチャレンジしていきたいですね。
「toberu」に使用した3つのカーテンの特徴
ライブラリーには、薄い綿(コットンオーガンジー)の素材を使用。24mの長距離を、弧を描きながら自動で動くカーテンレールを採用している。
中庭には、タイルの色と呼応するシルク素材のカーテンを使用。勾配天井にかかっているが、カーテンが片方に落ちてこないよう縫製を工夫している。
個室には、絵画のような分厚いウール素材を使用。より「絵画らしさ」を追求し、カーテンを引いてもレールが見えない特注のカーテンレールを採用している。