【集成材 (岩手県材カラマツと住田町産スギ)】
大船渡消防署住田分署では、「貫式ラーメン構造」を採用。木材の特性を生かした日本古来の伝統構法で、高い耐震性と耐震壁のない自由度の高い間取りを実現した。柱や梁は町産のスギやカラマツの集成材が中心。極力金物を用いず、柱梁の貫の接合部には木製の込み栓と楔を使用している。接合部の箇所数を増やすことで建物全体の剛性を確保するこの方式は、大量の木材を使用することで初めて成立する。従来の近代建築ではなるべく少ない部材で大きな空間を生み出すことが求められるが、「地域資源をより多く使う」という新しい価値観でつくられた公共建築は、木に精通している藤寿産業と親和性が高いといえるだろう。
公共建築は将来的に間取りが変更される可能性もあるので、耐震壁のない建築物をつくりたいというのが前提としてありました。貫構法はデータがあまりないため、1箇所あたりの強度を何度も検証しましたね。果たして設計通りに梁が通るか不安な部分もありましたが、藤寿産業さんに高い精度で加工をしていただいたため、驚くほどスムーズに梁が通ったのはさすがだなと思っています。
建材開発秘話
渡邉 宏さん
機械と職人による0.1mm単位の調整
木材は生き物ですから、わずかな反りなどから梁が柱に貫通しにくい部分もありました。しかし、高い精度でこの貫構造を実現できたのは、すべての部材について全自動機械のNC加工を行い、経験豊富な職人たちの高い技術があったからです。なかでも今回最も重要だったのが、唯一金物を使った柱脚部分。全体を支える部分にズレがあると、建物すべてに影響が出てしまうため、こちらについても施工前に手作業で0.1mm単位の調整を行い、金物を担当したゼネコンさんにも同様に0.1mm単位で合わせていただく繊細な作業を重ねていきました。
特殊物件へのチャレンジ力
今回は特注の大型建築物ということもあり、難易度の高い工法でしたが、社内の全ての部署を総動員し、建築家やゼネコンさんの要望に対して迅速に応えられるような体制を整えました。日々社内でミーティングを行い、実際の部材を使ってシミュレーション。これまで600棟を扱ってきた経験を活かしながら、検証を重ねてきました。工場検査時には仮組をし、部材の納まりを原寸で確認したことで、スムーズな施工を実現できたのではないかと思っております。どのような特殊な建築物であっても社員一丸となって知恵を出し合う、それが当社のチャレンジマインドにつながっていると自負しています。
若い世代による底上げ
今回の案件で現場の職長を務めたのは、入社2年目の20代若手女性社員。福島出身の彼女は、学生時代から地元の大学で建築を学び、地元産材を使った木造建築を推進していきたいという想いを持っていたことから抜擢しました。現場では無事故、安全作業優先で指揮に携わり、しっかりと役目を果たしてくれたと思っています。弊社では経験豊富なベテラン社員はもちろん、若い社員にも積極的に大型案件を任せています。次の世代に向けて想いと技術、経験を伝えていく。そんな風土が根づいています。
藤寿産業と手掛けた「貫」構法の特徴
東日本屈指の大規模工場による生産体制を持ち、設計から製造、施工まで高い技術を有しながらトータルで手掛けている。
集成材の製造・加工を中心に幅広い木材加工の対応が可能。大型断面や湾曲した材など、建築家の要望に合わせて精度の高い加工を行ってくれる。
今回の屋根架構は小断面の製材を使用したことで材取りが容易に。この技術により、 今後、木造の公共建築において地元産材普及の促進が期待される。
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