【GRC】
GRCは強度が高く、さまざまな色や造形が可能なため、外壁をはじめ建物の幅広い箇所で活躍する建材だ。「京都市京セラ美術館」では、本館の東側に誕生した新館「東山キューブ」の外壁部分に使用した。西澤氏は特に色味にこだわり、「本館と並んだ時に増築した新館が浮かないよう、建物同士が調和するような色の調整に苦労しました」と語る。外壁は黄色みがかったやわらかなオレンジ色だが、光が反射することで陰影がつき、ゴールドやグレーのようにも見える。新しい建物にもかかわらず遠目から新館を眺めると、まるでずっと前からその場所にあったかのような趣きを見せるのも、細かい色の調整による効果である。京都は借景を重んじる文化があるため、西澤氏は景観のなかでの建物の見え方にも配慮した。まちのあらゆる場所から美術館を眺めても、京都のまちに溶け込んでいるのがわかるはずだ。
メーカーの技術力と細やかな対応力
京都は景観的な規制が厳しく、外壁に金属を使うことを景観審議会で規制されています。窯業系のタイルやコンクリートなら問題ありませんが、すでに本館でタイルを使っていることから、新館では新しい素材を使いたいと考えており、GRCを採用しました。旭ビルウォールさんは前職の青木淳事務所の頃から知っており、「青森県立美術館」や「ルイ・ヴィトン」等のハイブランドショップの外装も手掛けているなど、外装エンジニアリングとしての技術力はお墨付き。工場に足を運んで細かい部分を要望しても対応してくださるので、信頼しています。今回は本館が特徴的な色のタイルだったので、それに調和するようデザインも細かく調整していただきました。
建材開発秘話
GRCにしかできない仕上げを
「東山キューブ」では焼き物特有の手作り感を出すため、色の調整だけでなく製造方法も検討しています。GRCを型枠から外した後は極力補修を加えないことで、エッジにシャープな凹凸感が出るよう工夫しました。また、パネルに“荒れ感”を表現するため、本来コンクリート製品にとっての不具合といえるピンホールをあえてつくり出しています。穴を5mm程度の大きさに調整し、ある程度規則的な間隔でつくるのは難題でしたが、蓄えた知見を最大限に活かして自然な仕上がりにできました。
GRCの特徴
GRCは、コンクリートを耐アルカリガラス繊維で補強した「ガラス繊維補強セメント」。鉄筋による補強ではないため錆が原因の劣化やメンテナンスの心配がない。
型枠に流し込んで成形するだけでなく、吹付けて成形するなど特殊な成形方法も可能。造形性に優れるほか、表面の仕上げ方もコンクリートと比べて自由度が高い。
鉄筋のかぶりを確保する必要がないため、強度を維持しつつ省スペース化・薄肉軽量化。運搬・施工が容易になるだけでなく、構造躯体の負担も少ない。
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