──一般社会には建築の話や、今回の「協奏」、STEAMがまだ届いていない感じもしますし、もっとこの思想が広がっていく場があるといいのですが。
小堀:そうですね。大阪・関西万博にて広げていきたいと思っています。
中島:思想を絶えず磨き続けながら具体的な形にもして、また思想に立ち返り、みんなで作っていく流れになるはず。
小堀:STEAMにしても今は「新しい教育かな?」くらいのイメージだと思いますが、話を聞けば誰もが腑に落ちる思想ですよ。では、それをどう伝道していくか、ということにハードルも上がっていきます。
中島:今回の茶室プロジェクトを世界中で実施することもできそうですよね。
小堀:それぞれの国のやり方がありますが、できるかもしれませんね。フレームは分解して移動もできますし、今回は日本の越前和紙を使用しましたが、その国が持つ手に入りやすい素材を使えば。ある意味茶室の精神を輸出しながら、このプロジェクトから生まれる精神を逆輸入する仕組みはできそうです。
中島:やってみたいですね! 日本の精神性は、実はグローバルというか「あ、なるほど」という気付きが結構あると思います。その上で、現地の人たちとのものづくりはとても興味がありますし面白いですね。この茶室プロジェクトを通じて公共的な、作りたくなるような開かれた場が増えていくと面白いと思います。
小堀:そういった意味でいうと、同じ「つくる」でも建物ではなく“場”をつくる、ということになりますね。文化ホールにしても図書館にしても、これまでの建物は、その中を「使う」一辺倒であって、「つくる」という感覚さえありませんでした。しかし今回のプロジェクトを通じてホールの中で「つくる」ことを体験しました。そうすると道行く人が興味を持って参加したりしてきて、発信者として“場”をつくることができたわけです。だから建築家はこういう“場”をつくっていかなければ、と感じました。本当にだだっ広い、何をしてもいい場所で始めていくと、少し世の中も変わるのでは、と思います。
──つくるプログラムがたくさん生まれていきそうです。
小堀:今、中島さんたちsteAmは『未来の地球学校』という面白い取り組みをされています。パイオニアですから多くの障壁がありそうですが、実行する価値もありますし、賛同者も増えていくと思います。
中島:みんな“つくりたい種”のようなものを持っていて、それぞれは違っていてもつくることを通して見えてくる世界を共有して認め合えるようになると面白いと思います。そのきっかけを大阪・関西万博でできると面白いですよね。今回の茶室などはその象徴でもあります。
小堀:まず親御さんが興味をもって来られましたが、子どもたちも最後にはすごく楽しんでくれて。大人も子どもも真剣にやり始めていましたね。
中島:小学生が「今日自分は建築家みたいだった」と言っていたのが象徴的でした。
──最後に、『世界ペーパーアーキテクト大賞』にエントリーいただいた方にアンケートを取らせていただいたのですが、とても積極的な言葉をいただきました。
小堀:このコンペこそ「協奏」であり「共創」であり「STEAM」だと思いますよ。
中島:しかもこのコンセプトがいいですね。
小堀:大阪・関西万博まで続けて、パビリオンの中で展示したいです。
中島:考えるきっかけを渡すだけでも大きく世界は動く。皆さんの作品がとても楽しみです!