福祉施設に豊かな光と彩りをもたらす建材とは。
Nagasaki Job Port
「Nagasaki Job Port」は、40名ほどの知的障害をもつ利用者が通う障害者福祉事業所である。新幹線建設により移転が決まったこの施設の理事を、Eurekaパートナーである堀英祐氏の友人が務めることになった縁から、新施設の設計者としてEurekaに白羽の矢が立った。施設には足腰が弱く移動が困難な利用者もいるため、既存の建物を取り壊さず仮設利用しながら新施設を建設することが求められた。
施主が提示したもう一つの要望は「利用者を閉じこめるような場所にはしたくない」というものだった。福祉施設は人里離れた土地に建つことも多く、安全面を考慮しても閉鎖的になりがちだ。「建築の構えによって閉鎖的になってしまうことは避けたい」と考えたEurekaは、自然採光を基本とし、可能な限り柱をなくした作業室・ランチルームとしての2つの大空間と、パーソナルな休憩場所としての小空間を設けた。このプランが、仕事場という機能を超えた開放感を空間にもたらしている。それと同時に、人や物が隠れるスペースがないことで施設スタッフが利用者を見守りやすくなり、安全性の向上にもつながった。柵や塀がないジグザグの折れ屋根がかかった平屋は、周囲の山並みや倉庫建築になじみ、建築とランドスケープによって地域に開かれた環境を実現している。
「利用者のみなさんは我々が想像するよりもはるかに真剣に仕事と向き合い1日を過ごしています。そして、その1日を数十年続けるかもしれない。作業の手を止めた時にふと周りの豊かな自然環境を感じ、生活に潤いが生まれるような施設でありたいと考えました」と語る佐野氏と稲垣氏。「Nagasaki Job Port」は福祉施設の既成概念を飛び越え、誰もが主体的に過ごし方を選択できる空間となっている。
Nagasaki Job Port
所在地 / 長崎県長崎市
設計 / Eureka
施工 / 大進建設株式会社