自然素材のみで作られた 土に還るペンキ「HiLaRi」の機能性を比較で解明

CLASS1 ARCHITECT Vol.16 では、建築家の川島範久氏が中規模オフィスビル「REVZO虎ノ門」で使用した建材を紹介しました。その中の一つが、内装仕上げに使用した「ソイルペイントHiLaRi」です。

HiLaRi は株式会社 KS AG が販売する塗料で、水や土などの自然素材でできているのが特徴。「調湿性や消臭効果があり人体にも優しい」という理由で、川島氏に採用されました。

今回は自然素材でできた塗料 HiLaRi について、従来の塗料とどのような違いがあるのか、比較しながら深掘りしていきたいと思います。

さらに、川島氏や株式会社 KS AGへの独自取材で得られた声を基に、「HiLaRi がどのような建築士に採用されているのか」「どのような建築士におすすめなのか」も併せて紹介します。

HiLaRi と普通塗料との比較

HiLaRiと一般的な油性ペンキ・水性ペンキを比較します。比較するのは以下の5項目です。

  • 成分
  • 乾燥時間
  • 価格
  • 耐久性
  • ペンキ汚れの落ちやすさ

①成分

一般的な塗料の成分は、樹脂・硬化剤・顔料・添加材・溶剤など。溶剤に有機溶剤を使用したものが油性塗料、溶剤に水を使用したものが水性塗料になり、人体への影響や環境配慮の面から、最近では水性塗料の開発が進んでいます。

ペンキやペイントの歴史は世界的に見てもまだ短く、石油を生成して作るナフサなどの樹脂からできているものがほとんどです。

一方で、HiLaRi を構成する成分は、水分、粘土、石灰岩、陶土、大理石、酢酸エステル、セルロースと、0.1%以下の保存料。土と水などの自然素材を混ぜてできた塗料であり、土ならではのマットな質感がでます。廃棄時も土に還るため、CO2を排出しません。

②乾燥時間

一般的な塗料では、水性と油性で乾燥時間は変わりますが、水性塗料の場合は4時間、油性塗料の場合は6時間程度で乾燥すると言われています。

一方でHiLaRi の乾燥時間は2時間。一般的な塗料よりも乾燥時間が早いです。

③価格

一般的な塗料で見てみると、おおよそ 2,000円~3,500円/0.7L の価格帯で販売されています。インターネット通販やホームセンターなどで購入できます。

HiLaRi も専門のECサイトで購入することができます。サイトでの販売価格は 8,250円/1L と、一般的な塗料よりも高価な価格で販売されています。

④耐久性

水性塗料の開発が進む以前は、油性塗料の方が耐久性が高いと言われていました。しかし現在では水性塗料の改良が進み、油性塗料と同様の耐久性を持つ水性塗料も増えています。油性塗料・水性塗料共に外壁などに使用できる耐久性を備えます。

HiLaRiにはマットとセミマットの2種類があります。耐久性は、マットはやや劣りますが、セミマットは油性や水性の塗料のそれと変わりません。マットであっても、上からトップコートを吹き付けて耐久性を上げる(傷付きや剥げを抑える)こともできます。

マット・セミマットにかかわらず外壁への使用は不向きで、室内用塗料として内装の使用、特にリビングや寝室などへの使用が勧められています。

⑤塗料汚れの落ちやすさ

ペンキ・ペイントは、ハケやローラーなどを使ってDIYで施工することも多い仕上げ材です。

衣服や手に塗料が付いてしまったとき、一般的な塗料は中性洗剤・除光液などを使って落とす必要があります。

一方で ほぼ水と土でできた HiLaRi では、乾く前であれば、⽔洗いで落とすことが可能。硬化後でも、お湯で汚れを落とすことができます。

土壁や漆喰を好む建築士の新たな選択肢に

塗装用の建材である HiLaRi は、土壁や漆喰の質感を好む建築士に最適な仕上げ材です。

土壁や漆喰などの左官は、自然素材で脱臭性・調湿性など機能性に優れ、重厚な質感が好まれています。その一方で、塗料と違い材料の保存がきかず、職人による施工が基本のため価格が高い仕上げです。

HiLaRi は、左官よりもリーズナブルな価格で施工することができるうえ、左官と似た自然素材特有のマットな質感を出すことができます。さらにカラーバリエーションも180色と豊富。

左官の質感を出したいが、「費用や工期を抑えたい」「色を自由に調整したい」という方に好まれて使用されているようです。

 
HiLaRi を選んだ川島氏のコメント

「土や木などの緑で包まれた家の設計に関わったとき、理想は左官でしたが、費用的にも工期的にも難しかった。

「その中で、HiLaRi は土の質感を出しつつ、健康にも良い。自分たちで簡単に塗れることが決め手になりました。」

 
株式会社KS AG 境氏のコメント

「『漆喰や珪藻土は、なかなか色で遊べない』という方が多くいらっしゃいます。HiLaRi は自然素材でありながら、左官よりも手頃な価格で、カラーバリエーションが豊富。」

左官ほどの高級感を求めない方であれば、色の調整が自由にできるHiLaRiをおすすめしています。」

川島氏による「ソイルペイントHiLaRi」のレビューを無料公開しています

CLASS1 ARCHITECT Vol.16では、今回ご紹介した HiLaRi を中規模テナントオフィス「REVZO虎ノ門」で使用した建材として掲載。REVZO虎ノ門を設計した建築家の川島範久氏によるレビューと、メーカーの開発秘話を読むことができます。

漆喰や土壁に代わる、壁仕上げ材の新たな選択肢の一つとして注目の建材です。アプリでは全文を無料で公開していますので、ぜひご覧ください。

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