デザイン性の向上だけではない
創造性を刺激するための解
「REVZO虎ノ門」は、中央日本土地建物株式会社と建築家の川島範久氏が具現化した、中規模テナントオフィスビルの新たな試みだ。コンペにおいて川島氏は、「このスケールだからこそ実現できる、新たな価値を創造する」として、内外装のデザインのみならず、内部構成にまで踏み込んだ提案を行った。
求められていたのは、利用者が自由に、創造的に、そして健やかに仕事ができ、発想や交流が活発に生まれるオフィス環境だ。多様な使用目的に対応できる空間の柔軟性と、安全性も重要だった。これに対し川島氏は中規模ビルだからこそ実現できる解を用意した。
オフィスビルは、通りに対して最大のワイドをとるようにワークプレイスを設け、その背後にエレベーターや階段、機械室などの機能を伴ったコアを設けるのが一般的だが、「REVZO虎ノ門」ではコアを建物の東西に分離して配置し、南北に開かれた大空間をつくる計画とした。建物の奥行きは18m程度と浅いため、南北に大きく取った窓からワークプレイス全体に十分な自然光が差し込み、心地よい風が吹き抜ける。外堀通り側には住宅のように引き戸で出入りするバルコニーを設け、ふんだんな植物とその拠り所にもなるステンレスのメッシュを設置した。ビル内では植物や窓辺に掛けられた透過性の高いカーテンを通じて外の自然とのつながりを色濃く感じることができ、一方でビルを外側から眺めると、内部で働く人々を包摂し都市の中に屹立する大樹のような様相をもたらしている。
エントランスホールの大きなデジタルスクリーンに映し出されるのは、このビルで用いられている、高岡銅器や有田焼などの建材のストーリー映像だ。「自然からの刺激や、空間を構成するものの背景を知ることで生まれる愛着といったものが、創造性を高めることにつながると考えています」と川島氏は語った。自然の循環の中に融和させることで、働く人の心身を解き放つオフィスが稼働し始めた。