新たな選択肢を生み出す建材とは。
Triton

大阪府豊中市、閑静な住宅街にある溜池のほとりに建つのは、石と茶色の壁が迷彩模様のように混ざり合った外観が目を引く邸宅だ。一言では表現できない形状を持つ建物の北側には溜池と桜並木が続き、一年を通して美しい景色が見られる。この土地のポテンシャルを活かしたいという施主からの依頼をもとに、「Triton」の設計はスタートした。「本来であれば、溜池に面した北側になるべく大きな眺望を取るのが定石かもしれません。しかし、毎日同じ位置で眺望と向き合うのではなく、日々刻々と表情が変わる池の景色とさまざまな出会い方ができるプランを考えました」と松島氏は語る。

「triton」はギリシア神話に登場する三叉の矛を持つ海神が由来となっている。人間の上半身と魚の下半身という異なる姿を持つように、この建物も三叉型をした一階部分に巴型をした二階部分が重なっているのが特徴的だ。この形状によって多様な動線が生まれ、眺望と真正面から向き合うのではなく、ふと生活のなかで景観が見えるなど、「眺望を見る/見ない」の二択ではない新たな距離感をつくりだしている。さらに二階部分には半外部空間である大きなインナーテラスを設けることで、建物の内と外という境界を打ち消し、周辺環境との一体感が感じられるような空間となった。

 インナーテラスでは家族でゆったりと景色を眺めたり、客人を招いてバーベキューをしたりなど、季節に合わせてさまざまな楽しみ方ができるようになっている。しかし、月日とともにライフスタイルは変化するもの。家族の成長とともに過ごし方が変わったとしても、このインナーテラスは大らかに受け止めてくれる余白を持っている。風景との向き合い方から建物での過ごし方、建材の選び方に至るまで、一つの価値観に固まらない新しい選択肢を生み出している「Triton」の設計には、「これからの住宅がもっと自由で多様性に富んだものへと進化していく布石になれば」という松島氏の思いが込められている。

Triton
Triton

所在地 / 大阪府豊中市
設計 / 松島潤平建築設計事務所
施工 / コハツ
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