ダイバーシティとインクルーシブのための建材とは。
八戸市美術館

2021年11月、「八戸市美術館」が大規模なリニューアルを遂げた。青森県八戸市は「八戸ポータルミュージアム はっち」、「八戸ブックセンター」などさまざまな文化政策に力を入れている自治体である。「有名な作家の作品を展示するだけではなく、市民によってつくりあげられたアートを展示するような開かれた美術館が望まれていました。審査員も、その後館長になった佐藤慎也さんや青木淳さんなど、本当に美術が好きな人が多かった。“これなら自分たちにも面白そうな設計ができるのではないか”。そう思い、このプロポーザルに参加しました」と建築家の浅子佳英氏は語る。

今回の設計は、PRINT AND BUILD(当時:タカバンスタジオ)と西澤徹夫建築事務所の共同体に森純平氏を加えたチームで進められた。商業系の建築やインテリアを主に手掛ける浅子氏と、これまで数々の美術館を手掛けてきた西澤氏。それぞれ異なるフィールドで活躍してきた両者であるが「建物に対する考え方は共通点が多かった」と浅子氏は振り返る。「館内の空間の配列は特に重要視していましたね。『八戸市美術館』は展示だけではなくワークショップなどの用途も想定されていたため、全ての部屋を開放して使う場合なども考えながら、最も創造的に遊ぶことのできる配列を考えました」。

設計にあたり、海外の美術館も視察したという浅子氏。「個人的に面白かったのはサンフランシスコの科学博物館・エクスプロラトリアムで見た“展示物の制作風景が見られるエリア”でした。作品は美術館に展示されると途端に大人しくなってしまいますが、実は裏方がダイナミックで面白い。そこで『八戸市美術館』では展示用の什器や作品の製作風景が外からも見える『アトリエ』を設けました」と語る。この美術館にあるのは「ラーニング」という概念。アーティストや学芸員主導ではなく、地域住民とともに考えともに学ぶ場として、これから多くの化学反応が生まれることが期待されている。

八戸市美術館
八戸市美術館

所在地 / 青森県八戸市
設計 / 西澤徹夫建築事務所・タカバンスタジオ(現:PRINT AND BUILD)設計共同体
施工 / 鴻池組・田名部組・東復建設特定建設工事共同企業体
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