【フィッシュレザー】
レセプションホールの天井から吊り下げられた照明。美術品のような佇まいが目を引くランプシェードの素材は「魚の革」。漁業が盛んな富山県氷見市を拠点に活動するフィッシュレザーブランド「tototo」の野口朋寿氏に本瀬氏・齋田氏が特注した品だ。魚の革は世界的にはまだ生産量が少ないものの、独特の鱗模様や、薄さに比して高い強度を持つ機能性からエコレザーとして注目されている。tototoのフィッシュレザーは、廃棄される魚の皮を鮮魚店などから回収し、皮内側の脂身を削いで洗剤と石灰の溶液で脱脂加工した後、なめし剤を浸透させ、乾燥させてつくられる。このランプシェードにはクロダイの革が用いられており、ランプの灯で鱗模様が浮かび上がるよう、皮の漂白も着色も行わず、なめし剤の浸透量を繊細に調整。「皮と革の間」の質感に仕上げることで、鱗の存在感がありながらも光が透過する美しい仕上がりを実現した。
地方ならではの縁と格別の素材感
tototo代表の野口朋寿さんが当社スタッフと同級生という、地方ならではの人と人との距離の近さによるご縁でこの素材に出合いました。富山の食材を使った究極の地産地消がテーマである「消滅集落のオーベルジュ」にはうってつけの素材だと感じ、施主の谷口さんに提案したところ一発で気に入っていただきました。tototoは財布やスマホケースなどの製品をつくっており、インテリアにフィッシュレザーを使うのは今回が初めてだったため、一緒に使い方を考えていただきました。クロダイの革を用いたのは、鱗の陰影が最も感じられやすかったため。建物全体として素材の質感を大切に扱いましたが、その中でもひときわ素材感を感じられるデザインとなりました。
建材開発秘話
透過度の異なる革を一つひとつ製作
ランプシェード製作は私自身初めての試みだったので、新しい挑戦にワクワクしつつもプレッシャーが大きかったです。今回は光源から革の位置が前後する仕様のため、光源との距離を計算し光を透過しつつも、鱗模様が認識できる程度の革に仕上げるところに最も苦労しました。革素材はなめし剤を浸透させて丈夫でしなやかな状態にしているのですが、なめし剤を完全に浸透させると光を透過しなくなってしまうので浸透量を調節し、光を透過しやすい革・しにくい革を製作しました。
「野口代表の思い」はこちら
tototoの特徴
「魚々(とと)と」のブランド名に魚と共存する豊かな未来への想いを込め、廃棄される魚の皮を再利用。なめし剤や染料も環境に配慮したものを使用している。
現在はブリ、マダイ、スズキのフィッシュレザーが主力で、今年はサケとマグロの革を追加予定。琵琶湖で外来種として駆除されているブラックバスの革も開発中。
フィッシュレザーを壁紙として扱いたいニーズもあり、インテリアの分野へも参入予定。今年6月の展示会「interior lifestyle Tokyo」への出展も予定している。
〒935-0004
富山県氷見市北大町7-4 シーパレス1F
TEL:090-2821-3649
MAIL:info@tototoleather.com
URL:www.tototoleather.com/