【転落防止ロープ】
「トコトコダンダン」には、水辺に面した約240mもの長い遊歩道がある。「土木の基準に沿った転落防止の役目を果たしながらも、視界を損ねず透明感のある柵をつくりたい」。そう考えた岩瀬氏は、東京製綱株式会社とともに転落防止ロープを開発した。柵のトップビームに採用したのは吊り橋に使用される金属製ストランドロープ。端部支柱に張力をかけ、構造的には100mのスパンを飛ばしている。たわみ止めや角度調整のための中間支柱には、最小断面寸法の細いフラットバーを採用することで柵の圧迫感をなくした。また、トップビームがロープであることにより「トコトコダンダン」の階段状の地面に対して美しく線を通すことを可能にしている。全ての柵が水際に均一に並ぶのではなく、蛇行するように配置されているのもユニークな点だ。この柵の配置により、人々が遊歩道を歩きながら水との距離感の変化を感じられる効果を生み出している。
身体感覚に訴えかける感触
現代の水辺には転落防止用の柵が必要なため、水との物理的な距離というより柵の仕様や配置が水辺との距離感を決めていると言っても過言ではありません。今回採用した東京製綱さんのロープは鋼製でありながら、麻ロープのようなやわらかな見た目。握って水を覗き込みたくなるような、身体感覚に訴えかけてくるところが気に入りました。「トコトコダンダン」では暗めのグレーに塗装し存在感を消すような使い方をしましたが、以前別のプロジェクトで採用した際はロープに天板を載せて脚のないテーブルを製作しました。私たちの事務所では土木的手法で建築や家具をつくったり、建築的な考え方で土木をつくったりと分野を横断し、そのフィードバックを楽しみながら設計をしています。
建材開発秘話
堀辰嘉さん
東京製綱だけができる塗装
今回の柵に採用されているのは、上段~下段がステンレス、最上段が変性飽和ポリエステル樹脂塗装を施したロープです。変性飽和ポリエステル樹脂塗装は非常に耐久性に優れており、通常は塗装が困難と言われるワイヤロープにコーティングができるのは当社のみ。現在「タフコーティッド」という名前で製品展開を行っています。強度とデザイン性を両立する設計に大変苦労しましたが、岩瀬さんがこだわりを持って案件に向かっている姿を見て、何とかお応えしたい一心で仕上げることができました。
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東京製綱株式会社の特徴
髪の毛より細い極細ワイヤから直径100mm超のワイヤロープまで扱うケーブルの総合企業。その用途はクレーンやロープウェー、エレベーターなど多岐に渡る。
ロックドコイルロープの開発(1939年)から世界最高速エレベータ用ロープの開発(2004年)まで、前例のないワイヤロープの開発に挑戦し、革新的な製品を世に送り出す。
ワイヤロープはエレベーター、建設機械、水産業、鉄鋼業を中心に約40%を占め、スチールタイヤコードでは独立系メーカーの中でトップシェアを誇る。
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