湯浅良介が紹介する信頼できる現場監督
建築は、建築家を中心に、構造家・CADオペレーター・職人といった、さまざまな方々の協力によって成り立っています。今回は建築家の湯浅良介氏に、信頼している現場監督の方をご紹介していただきました。
─ 湯浅さん、信頼している現場監督を紹介していただけませんか?
株式会社 安池建築工房の横山一浩(よこやまかずひろ) さんを紹介します。
「FLASH」の現場監督を担当していただきました。
〒256-0816
神奈川県小田原市酒匂5丁目5番17号
TEL:0465-43-7926
URL:http://www.yasuike.co.jp/
─ 横山さんとの仕事で印象深かったことは?
現場のまとめ方にはその現場監督のまさに人となりが出ると思いますが、横山さんのまとめ方は、淡々と、冷静に、柔軟に、といった長年の経験に裏付けされた落ち着きがありました。「FLASH」の現場の職人さん達は皆腕に覚えがあり自身の職能にプライドをもった個性的な方達で、その方達が現場で活き活きと作業されていたことが印象に残っています。それはつまり、横山さんがそれぞれの職人さん達が仕事をしやすいように取り計らいながら自分は一歩引いて全体を俯瞰するような態度をとっていたからだと思います。俯瞰しながら、監理をする設計サイドへ逐一情報を投げてくれるため監理もしやすく、胸を借りるような気持ちで現場へ臨むことができました。
─ 湯浅さんから横山さんへメッセージをお願いします。
構造、意匠ともに今まで建てた物件とかなり異なっていたため、施工順序、各部の納まりなどに悩みました。高基礎で床組(床面を支える骨組み)が無く、土台が窓台を兼ねている上、角材の筋交いが絡んでいるので、サッシが納まるまでは気が抜けませんでした。幾度も職人さんと協議し知恵を出し合って何とか完成させることが出来ました。
お話を伺いました。
─ 「FLASH」で、特に印象に残っていることを教えてください。
第一印象は『一体どこに家を建てるの?』でした。道も電気も水道もなく、こんもりとした雑木林だけが見えるだけでした。まずは建てるための道づくりと伐採範囲の検討ですが、これがとても大変。敷地は最大5~6mの高低差があったので、水平距離を出すのにも苦労しました。また至る所に生えている樹木や草が計測をより困難にしました。事前調査や計画を入念に行い、土木工事に精通している方の意見も参考にしながら問題をクリアしていきました。このプロジェクトを無事終えられたことは職人さんたちにとって大きな自信になったと思います。
─ 横山さんの仕事上のポリシーを教えてください。
一人でできる仕事ではないので、人間関係が重要だと思っています。多種多様におられる職人さん達の性格を見て話し方や話題など考えます。そして、それぞれの技量や意見を見聞きし現場をいかに効率的に回せるのかを常に考えています、順次手詰まりなく仕事が流れるよう、材料の手配から現場の片付けまで多方面への気配りを心掛けて仕事をしているつもりです。
─ 建築を学ぶ学生の方へメッセージをお願いします。
建築には数多くの人が関わるので、人間関係や人脈は大切にしたほうが良いと思います。長く仕事をしていると、5年後、10年後に全く別の現場で再会する職人さんも多くいて、「悪いことはできないもんだなぁ」と冗談で職人さんに言われたりすることもあります。また、楽しくコミュニケーションをとりながら進めていく方が良い建築ができるような気がしますね。まじめに取り組んでいれば、いずれ自分の評価につながるのではないでしょうか。
「CLASS1 ARCHITECT Vol.27」では建築家の湯浅さんによる建材のレビューをご紹介していますので、ぜひご覧ください。