LOCAL建材
唯一無二の色彩を生み出す伝統着色技術代表取締役 折井 宏司
富山県
日本唯一の青銅器の産地である富山県高岡市。400年の伝統を持つ銅器製造技術の集積地として、花器や仏具、野外の大型ブロンズ像(銅像) などさまざまな銅器がつくられている。
折井 宏司 Koji Orii
1970年富山県高岡市生まれ。さまざまな銅器を発色させる伝統技術を応用し、新たな技法を確立。建材・クラフト作品など幅広い分野に提案を広げている。
産地の危機感から自社製品を開発
当社は昭和25年に折井着色所として創業以来、高岡銅器の伝統技術を受け継ぎながら、美術工芸品や銅像、仏具などさまざまな銅製品の発色を手掛けてきました。高度経済成長期は高岡銅器の生産量はピークを迎えていましたが、バブル崩壊とともに高岡銅器の需要は急速に減り始めていきます。当時、東京でIT関係の仕事に就いていた私は、26歳の時に高岡に帰郷。家業を継ぐ決断をしましたが、市場はより縮小の一途をたどっており、高岡銅器に従事する人たちの年収を導き出すと、食べていくことすら難しい状況になっていました。高岡銅器は問屋を介した分業制ですが、脱下請けを目指し、自社で需要を生み出せるビジネスを考えようとオリジナル商品を開発することに。インテリアが好きだったこともあり、自社の発色技術を掛け合わせた製品を考え始めました。
独自の発色技術で新たな販路を開拓
そこで当社が目をつけたのは、薄い銅板でした。高岡銅器は、鋳造された銅や真鍮の表面に食品や薬品を使って化学反応を起こし、腐食の作用で錆を発生させ色を出します。本来、薄い銅板に色を施すと溶解や曲げが生じてしまいますが、熱や薬品の組み合わせなど試行錯誤を2年ほど繰り返し、1mm以下の銅板に発色させる独自の技術を確立しました。展示会や口コミで当社の技術が広まり、新しい素材を求めている建築家からも次第に問い合わせをいただくように。これまでにはない建材マテリアルとして、飲食店やホテル、神社、公共施設などさまざまな建物の壁面装飾や看板などにも採用いただいています。
異業種とのコラボを模索
職人たちの細やかな手作業により、「斑紋孔雀色」をはじめとした独自の色彩を生み出してきました。今後、力を入れていきたいのは、異業種とのコラボレーション。当社では現在、銅板を使ったバッグやジャケットといったファッションアイテムや、アウトドアグッズ、楽器、高岡銅器の色彩をプリントしたテキスタイルなど、さまざまな分野で新たな商品が誕生しています。この他にも私たちの技術を活かせる分野はまだまだあるはず。今後も高岡銅器が表現する色彩の魅力を発信しながら挑戦を続けてまいります。
- 有限会社モメンタムファクトリー・Orii
- 〒933-0959
富山県高岡市長江530 - TEL : 0766-23-9685
- WEB : https://www.mf-orii.co.jp/