建物に集う人たちの創造性を育む建材とは。
須賀川市民交流センター tette

新たな出会いと交流をもたらす市民が主役の複合施設

2011年の東日本大震災により、甚大な被害を受けた福島県須賀川市。全壊した総合福祉センターに代わる新たな施設として、2019年に誕生したのが「須賀川市民交流センターtette」である(以降、tette)。プロポーザルでは「新しいアイデアで創造的な復興にしたい」という須賀川市の強い思いから、「40歳以下の若手建築家をチームに加えること」が条件に入れられた。設計を手掛けたのは、大手組織事務所とともに当時34歳だった建築家の畝森泰行氏。設計にあたり、市民ワークショップを25回開催し、延べ450人以上もの市民から計1,400におよぶ意見が寄せられた。

建物はスラブ(床)が細かくズレながら積層し、いくつものテラスをつくっている。また、各フロアを図書館や公民館といったハード面で分断するのではなく、「あそぶ」「であう」「まなぶ」といった使い方を重視した9つのテーマでエリア分けを行い、各機能が融合するような公共空間を目指した。施設内では、子どもを遊ばせながらお母さんがゆったり本を読んだり、年配の方が建物内をウォーキングコースとして利用したりなど、訪れた人たちが思い思いの使い方をしながら、空間を楽しむ様子が見られる。

オープン後、1年足らずで65万人以上の人が訪れるようになった「tette」は、まさに市民が主役となる公共空間となった。人々の活気が地域全体に波及するような「結び目のような存在」。それが、畝森氏の目指す公共建築なのである。

須賀川市民交流センター tette
須賀川市民交流センター tette

所在地 / 福島県須賀川市
設計 / 石本建築事務所+畝森泰行建築設計事務所

こんなところも建築のポイント!

テラスと室内をつなぐサンルーム

館内には7カ所に開放感のあるサンルームが設けられている(p.19で紹介)。テラス部分と室内をつなぐ大きな軒下のようなこのサンルームにはあえて空調を入れず、開口部は木製サッシにシングルガラスを入れることで、半外部的な中間領域を生み出している。軒下は、日本の建築においても馴染みのある空間。外の景色や空気をゆるやかに感じたり、周りの人の気配を気にせず会話を楽しんだりなど、利用者が思い思いに過ごすことのできる憩いの場所となっている。

構造の要となるメガストラクチャー

「tette」は各フロアの床が分散配置していることにより、静かな場所や賑やかな場所など、館内にさまざまな空間を生み出している。それを可能にしたのが、建物の3・4階部分に構築した剛強な床面構造(メガストラクチャー)。この床によって一部の床が自立したり、吊り下げられたりしている。また、メガストラクチャーはトラス構造となっており、上下階の部屋の空調設備を設置したり、吸音層や排煙ルートとして機能させたりなど、多くの役割を果たしている。

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